農協がいま問われているものは?
JAの組織討議案決定前に
農・農研が第65回例会
関連/農の未来ネットが発足
JA全中は、今秋に開かれる第25回農協全国大会の組織討議案を4月9日の理事会で決定しました。タイトルは「大転換期における新たな協同の創造」。取り組みの柱は(1)農業の復権(2)地域への貢献(3)そのための経営改革の3つ。そして農地法改悪を前提に「JA本体による農地管理・農業経営を実施することも実践課題に盛り込む」と明記しています。
農業・農協問題研究所は4日、東京・新宿農協会館で「いま農協になにが問われているのか―第25回全国農協大会にあたって」をテーマに例会を開き、4人の報告をもとに話し合いました。
元日本大学教授の伊予軍記さんは、「農民主導型の農産物直売所を開設していけば、地域農業の担い手と農民主体の販売方式を確立していくという新しい時代をつくっていくきっかけになるのではないか」と述べました。また元明治大学教授の北出俊明さんは、組合員の「非農業者」化がすすんでいるなかで、「自治・自立の原則」のもとにどのように協同組合として地域社会の建設に参画していくのかが問われている、と警鐘を鳴らしました。
農民連参与の山本博史さんは、農林中金の巨額な増資について、農民の資産をアメリカのバクチ的な金融運用にまわしてきた責任などをきちんと総括すべきだ、と強調。全農協労連委員長の国分博文さんは、系統農協がすすめてきたリストラ型の組織再編や人件費削減の経営戦略を批判し、労働組合として「地域と農家に役立つ仕事がしたい」という農協職員の願いにこたえる事業のあり方について報告しました。
参加者からは、大会案で「助け合い」を軸にした地域セーフティーネットづくりの活動も提起されているが、組織活動をどう活性化させていくのかが見えてこないなど、批判的な意見が出されました。
農の未来ネットが発足
アグリ・ボラバイト事業を実施
将来の農業の担い手を育成する「農の未来ネット」の設立総会が3月28日、東京都千代田区のNPO法人食農研センター「ワーカーズ・フェアビンデン」で開かれました。
設立趣旨は、日本の食料自給率の向上を目標に、農業経営の担い手を積極的に支援するとともに、新たに就農を望む人々にその道を切り開く運動、さらには国内農産物の消費拡大を進めることです。
団塊世代や青年・学生ら農業・農村に興味と意欲をもつ人々を対象に、ボランティアとアルバイトの特徴をもつアグリ・ボラバイト(協働援農)事業を実施。農家がボラバイト参加者に一定の労働対価を支払い、お互いに責任と自覚を持ち、対等な立場で生産活動を協働して行います。
また、生産者、消費者、行政職員などと連携し、国内農産物の産直情報の提供、農業事情の調査研究、セミナーなどの情報交流を行い、日本の食料自給率向上に貢献することを目指します。
総会では、設立準備会を代表して、東京農工大学の倉本器征名誉教授があいさつ。最近、農業や環境への関心が高まり、若者や定年退職者らが農業の担い手として注目を浴びていることを紹介し、「都市住民を農村に招き、農業で働ける環境整備をしたい」と述べました。
その後、定款、役員、予算などを参加者が承認。東京都にNPO法人設立の認証を申請し、認可されれば、本格的に事業をスタートさせます。
埼玉産直センターの協力でこのほど、アグリ・ボラバイトの受け入れ農家が決まりました。今後は、千葉、茨城などにも受け入れ農家を広げる予定です。
(新聞「農民」2009.4.27付)
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