「農民」記事データベース20090420-873-01

農地法「改悪」案

廃案めざし世論・運動 早急に強めよう


耕作者主義否定、担い手を
利潤第一の企業に肩代わり

 戦後の農地制度を大転換する農地法「改悪」案の審議が、4月3日から衆議院で始まりました。自民・公明の与党は連休前の衆議院通過をねらっており、重大な局面を迎えています。

画像 この「改悪」法案は、家族経営を否定し、国民の食糧生産と農業の担い手を利潤第一の企業に肩代わりさせるものです。「改悪」した第1条の目的規定では、農地を効率的に利用する者なら、だれでも「農地についての権利の取得を促進する」と定めています。農民連の「この権利には所有権も含まれるのか」との問いに、農水省はなんら否定しませんでした。また、「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認め」ていた規定が削除されたことから、たとえば東京やアメリカにいながら北海道の農地を利用することもできるようになります。農地を不動産のごとく金もうけの手段にさせてはなりません。

 農地は、農産物を生み出す国民の共有財産です。この「改悪」案は、農業はもとより日本の将来にとっても重大な禍根を残すものです。廃案を求めて、反対の世論と運動を急いで大きく飛躍させましょう。

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ワタミファームの佐原農場(千葉県香取市)

農業委の権限強くなるが…

人員削減・仕事だけ増える
「役割果たせるか」の疑問の声

 農地法「改悪」案の特徴の一つは、権利移動規制の見直しや遊休農地対策の強化に伴って、農業委員会の責任が現在とは比べものにならないほど重くなることです。具体的には、権利移動を許可した後に、大企業が契約どおり農地を利用しているかという事後監視や、違反転用した場合の許可取り消し、耕作放棄地パトロールなど定期的な農地の利用状況の調査、遊休農地所有者への指導や勧告、相続による農地の権利取得の届出受理などです。

 とくに、世界をまたにかけて活動する多国籍企業に農地の利用を許可した場合、その監視を行うことも農業委員会の業務になります。

 しかし、農業委員会の体制は強化されるどころか弱体化しているのが実態です。市町村合併によって、1つの農業委員会が所管する農地面積が拡大する一方で、農業委員および農業委員会事務職員の削減が急速にすすんでいます。04年には全国で3035の農業委員会と5万6348人の農業委員がいましたが、07年には農業委員会が1200以上も減少して1818に、農業委員も1万8000人近くが削減されて3万8579人に。関係者から「いまでさえ大変なのに、こんなに責任を押し付けられて農業委員会の役割が果たせるのか」といった不安の声があがっています。

 一方で、地方分権を推進する財界などから「農業委員会を廃止して、第三者機関を設置すべき」との意見が出されており、これは消えていません。昨年12月に農水省がまとめた「農地改革プラン」では、「今回の改革の実施過程において、農業委員会の活動状況を検証する」とされており、5年後の農地制度見直しでは、“やっぱり農業委員会に任せることはできない”という結論がだされかねません。


経営が悪化すれば
企業は撤退して農地転売

画像 財界は、さかんに耕作放棄地が広がっていることを強調し、「意欲ある」企業に農地が利用できるよう求めていますが、企業が参入すれば農業が活性化するのでしょうか。

 たしかに、一部には地域に密着した土建業や食品産業が、原材料の確保や雇用対策のために農業に参入し、一定の役割をはたしていることも事実です。しかし、景気が悪くなれば途端に労働者の「派遣切り」やリストラに走る大企業に、農地を明け渡したらどうなるでしょうか。大手健康機器メーカー・オムロンが北海道千歳市に建設・稼動させた東洋一の「トマト農場」の倒産に見られるように、利益が上がらなくなれば“あとは野となれ山となれ”とばかりに、農地を荒れ放題にして撤退した事例を見れば明らかです。

 いまの制度上でも、企業が農業に参入することは可能です。にもかかわらず、農地法を「改悪」していっそうの規制緩和を迫っているのは、農地への支配とビジネス機会の拡大にねらいがあるからにほかなりません。

 現に、カゴメの役員(生鮮野菜ビジネス・ユニットディレクターの佐野泰三氏)は、農水省のある会合(経営の法人化で拓く構造改革に係る有識者懇談会、2002年9月2日)で「大規模野菜施設園芸農業を実施するためには、20ヘクタールないし30ヘクタール程度の真っ平な農地が必要。この場合、相当期間の賃貸借の権利設定のようなものが確保できると、企業としては非常にやりやすい」などと発言しています。

農地が自由に売買できる

アメリカの証券幹部が“証言”

 3月16日から20日まで麻生首相の「勉強会」(経済危機克服のための有識者会合)が総理官邸で開かれました。集められたのは、さまざまな分野から84人。そのなかに、モルガン・スタンレー証券(株)の経済調査部長、ロバート・フェルドマン氏がいます。アメリカから始まった金融危機に“おわび”でもするのかと思ったら、なんと農地法と農業委員会の廃止を主張。

 「農地法の改正と農業委員会の廃止が必要。一番、農地の使い方を妨害しているのは、この制度。(これを廃止すれば)、農地の自由売買ができるようになる。農地の不動産信託ができるようになり、輸出産業もできる」などというもの。株や資金をころがして、世界経済を“カジノ”にたたきこんだ連中が、今度は“農地ころがし”をねらう…。農地法「改悪」案は、その一里塚です。


宣伝用テープ緊急作製

 「農地法改悪」を許さないために、緊急に宣伝用流しテープを作製しました。おおいに活用して、反対の世論と運動を広げましょう。
 1本・1000円(送料込み)。注文は、農民連本部まで。

(新聞「農民」2009.4.20付)
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2009年4月

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