地球温暖化防止対策高い削減目標掲げ国際責任果たせ
今年12月にコペンハーゲン(デンマーク)で開かれる「第15回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP15)」は、「京都議定書」に続く2013年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みを決めなければならない重要な会議です。地球の未来がかかったCOP15に向けて、今年はさまざまな国際交渉が行われ、世界中の国々で温暖化防止の努力が強められています。
世界に逆行する政府の中期目標検討委「4%増加案」が目標?国際交渉の足を引っ張るもの「京都議定書」の議長国であり、先進国の一員である日本も、大きな国際的責任を負っていますが、日本政府は長期目標しか掲げておらず、一刻も早く実効性と法的拘束力のある中期目標を制定することが世界から求められています。ところがいま、麻生首相のもとでは、この中期目標をめぐって、「温室効果ガスの排出を増やしてもいい」という、とんでもない議論が進んでいます。 麻生首相のもとに設けられた中期目標検討委員会(座長=福井俊彦・前日本銀行総裁)は、3月27日、温室効果ガスの排出目標について、「選択肢」を提示しましたが、その内容は2020年の時点で1990年に比べて、「4%増加」という案から「25%削減」という案までの5案。「日本として低炭素社会づくりへの意欲がまったく見られない。科学の要請にも反し、国際交渉の足を引っ張るもの」「世界を失望させた」(環境NGOの共同声明)と、国内外からさっそく大きな批判が巻き起こっています。
大企業の負担あいまいにして国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、科学者からの警告として、「地球温暖化による破滅的な状況を回避するには、先進国は2030年ころまでに温室効果ガスの排出を25〜40%削減する必要がある」と試算しています。ところが「4%増加」を「目標」に据えようかというのですから、日本政府の姿勢は論外としか言いようがありません。これらの後ろ向きの「増加案」を後押ししているのが、日本の財界です。委員会の検討期間中、経団連や鉄鋼連盟などの業界団体は連名で、朝日・読売・日経といった全国紙に「考えてみませんか? 私たちみんなの負担額」という全面広告を掲載し、「CO2を3%削減するには、日本の1世帯あたりの負担は105万円になる」と国民を脅しました。
世論の高まりが政府の姿勢きめるしかし、日本のCO2の排出源をみると、電力、鉄鋼、セメントなどたった80社あまりの大企業が、日本中の約半分のCO2を排出しており、家庭からの排出は5%程度に過ぎません。大企業の負担はあいまいにしたまま、「温暖化対策のコストは国民全体で」などという財界の理屈は、国民世論とも、排出実態とも、とうてい相いれないものです。
高い削減目標のEU・アメリカ世界を見回してみても、EUは、経済危機にあっても90年比で30%削減という高い目標を掲げて、排出量取引や再生可能エネルギーの活用などの積極的な温暖化対策に取り組んでいます。また、アメリカはブッシュ政権下では一貫して世界の温暖化対策を妨害してきました。しかし、オバマ大統領への政権移行後は、環境への投資によって経済危機から脱却しようという「グリーン・ニューディール」政策を掲げ、下院民主党は、温室効果ガスの排出を2005年比で20年までに20%、30年までに42%を削減する法案を検討しています。このままでは日本だけが、世界中で進む温暖化対策から取り残される事態になりかねません。 中期目標検討委員会は5案を提示したまま、議論紛糾で結論をまとめきれませんでした。最終的には、麻生首相が政治決断を下し、6月に発表される予定です。世論の高まりが、今後の日本政府の姿勢を決めていくことになります。
地球温暖化防止の法律「気候保護法」(仮称)の制定を8万筆超 請願署名を国会議員に提出農民連も団体加盟する「公害・地球環境問題懇談会」(略称・公害地球懇)や、気候ネットワークなどの環境NGO、市民団体が、昨年から広範に結集し、地球温暖化防止の法律「気候保護法」(仮称)の制定を求める「MAKE the RULE(メイク・ザ・ルール)キャンペーン」に取り組んでいます。キャンペーンがこれまでに集めた8万筆を超える国会請願署名の第一次提出セレモニーが3月27日、国会内で行われ、シロベエ実行委員長らが署名を国会議員に提出しました。 気候保護法の制定を求める動きは自治体にも広がっており、3月27日現在で76の地方議会が意見書を採択しています。
(新聞「農民」2009.4.13付)
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[2009年4月]
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