「農民」記事データベース20090413-872-01

米トレーサビリティー法案

汚染米事件と国民の声に押されて

関連/加工業者にひろがるMA米敬遠の動き

 政府はいまの国会に、米関連3法案(注)を提出し、衆議院では全会一致で可決。参議院に送られ成立する見通しです。このうち、米トレーサビリティー法案(米穀等の取引等に係る情報及び産地情報の伝達に関する法律案)は、三笠フーズなどの汚染輸入米の不正流通事件で、きびしい世論の批判を浴びた農水省が打ち出した対策を法制化するものです。


「取引の記録保存」
「原産地情報伝達」
 義務づけに

 対象を米以外に広げるのも検討

 法案では、生産者を含む米穀事業者は、米と米を原材料とする加工品の取引の記録とその保存(トレーサビリティー)を義務づけられ、また小売りや外食なども含めて、米と米を原材料とする加工品の原産地情報を消費者に伝達するよう義務づけ、罰則規定も設けられています。

 衆議院では、「対象を米関係以外の飲食料品にも広げることを今後検討すること」などを内容とする法案の修正が行われました。

業者の届出制現状通り
対象品目などは政令で

 法案は、米に関係するすべての業者を対象にしていますが、業者の届出制は現行通りのため、悪徳業者を事前に排除することや、不正行為を事前に防ぐことは事実上不可能で、「なにか事が起こったら取り締まる」というものです。

 大口需要の酒やみそは含むのか

 対象となる品目は政令で定めるとしていますが、この間の国会答弁などでは、(1)玄米、精米、加工原料用のふるい下米など、(2)包装米飯、おにぎり、弁当、すしなど、(3)米粉、米飯類、もち、米菓の生地など、(4)米を主な原料とするあられ、せんべい、だんごなど、(5)米粉パン、米粉ケーキなど、としています。対象品目に、輸入米の大口需要先である酒やみそを含むかどうかが焦点になっています。

 原産地情報の伝達方法も政令で決めるとしていますが、印刷やシール添付のほか、メニューや店内掲示、店外での立て看板、インターネットでの提示などを認めるとしています。情報伝達の内容について農水省は、国産米は「米(国産)」とし、「都道府県単位にまで広げない」。輸入米は「中国産、米国産など産地国名になる」と業界団体に説明しています。

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MA米の目視監査をする大阪・堺の政府倉庫(2月12日)

大いに運動強め
実効あるものに

 消費者に選択の機会を保障する

 このように、肝心な点が政令にゆだねられていることや、消費者への情報伝達は、法律が公布されてから2年半後の施行とするなど問題点を持っていますが、この間の私たちの要求をある程度反映したものです。

 すでにMA米を購入した業者名の公表も実現しました。この法案が、消費者に商品選択の機会を保障できるよう実効あるものにするため、さらに運動を広げることが求められています。


酒も対象に

 内閣府の「事故米穀の不正規流通問題に関する有識者会議」は3月31日、政府に「取りまとめ」を提出。そのなかで「酒類を米トレーサビリティー法案の対象になるよう検討すべき」と提言しています。


MA米からまたまた

猛毒アフラトキシン

 昨年12月3日に、食品加工現場でミニマムアクセス(MA)米から検出された猛毒のカビ毒アフラトキシン。4月3日、農水省は再び0・8PPMのアフラトキシンが検出されたと発表しました。07年4月に2002トン輸入されたタイ産もち米からで、その67%はすでに市場に流れてしまっています。

 農水省は30億円もの血税をつぎ込み、日本中の倉庫で、すべてのMA米の袋をあけてカビの検査するという異常な作業を続けています。その結果、通常の10倍近いカビ状異物が見つかっています。農水省は「カビ毒の検査をして出荷するから安全」としていますが、一方では購入業者に、1カ月以内の消化や「カビがみつかったら使用中止」などの条件付きで売り渡しており、いつ汚染米が国民の口に入ってもおかしくない状況です。

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―半分近くはアメリカからの輸入です―

 いくら管理や検査を強化しても安全が確保できないMA米。輸入をやめる以外に解決はできません。


加工業者にひろがるMA米敬遠の動き

 「米麹(こうじ)は国産米使用」。3月21日の各紙朝刊に「本格芋焼酎さつま司」(販売元・アサヒビール)の大々的な広告が載りました。汚染米不正流通事件で回収・販売休止に追い込まれた商品を、「米麹には流通経路が明確な国産米を100%使用します」とうたって販売を再開したのです。

 加工業者の間では、安全を求める消費者の要求を背景に、MA米を敬遠し、国産米を使用する動きがひろがっています。

 鹿児島県の焼酎メーカー・西酒造

 汚染米事件で大きな被害を受けた酒造会社では、原料調達の見直しがすすんでいます。

 西酒造は、より安全な原料を調達するために、「芋と同じように米も契約栽培で確保する計画で、いま地元農家と交渉を進めています」(有馬健晃工場長)と言います。

 福島県のみそ・しょうゆメーカー・内池醸造

 福島県農民連などと取り組んでいる「大豆の会」のみそは、県産大豆と県産米100%です。会社では、半ば強制的な割り当てもあり、MA米も使っていましたが、今後は使いません。新しい法律もできるようですが、当社としては、ひきつづき安心・安全をお届けしていきたいと思っています。
(小澤茂常務の話)


(注)米関連3法案とは、米トレーサビリティー法案のほかに、食糧法改正案―主食以外に用途(加工用、飼料用など)を限定された米の管理規定の整備と罰則の強化をはかるもの。米穀の新用途への利用の促進に関する法律案―米粉・エサ米等に取り組む生産者と加工業者による連携事業計画の作成と認定を条件に、融資や債務保証などの支援措置を講ずるもの。

(新聞「農民」2009.4.13付)
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2009年4月

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