福島・二本松市で力強くうぶ声
育てよう!食と農の担い手を
ゆいまある
「いいぞ、チャレンジ精神」地域で広がる輪
「ゆいまある」――みんなで助け合って生きていくという意味の沖縄の言葉です。市民が年会費を出し合い、生産者と共同して食と農の担い手を育てる「ゆいまある事業」が、安達太良山のふもと、福島県二本松市で始まりました。
担い手どうする―徹底論議
「自分のやってきたこと、できなかったことをちゃんと次の世代につなぎたい」。安達地方農民連でこの思いが噴出したのは、昨年の忘年会でのことでした。「ものづくりの技術を伝えたい」「農民連の運動の発展に必要なことは何か」「遊休農地をどう活用していこうか」。話は大いに盛り上がりました。そしてみんなが一致したのが、「いま、もっとも大切なのは、『担い手』だ。担い手を育てよう」――これが「ゆいまある」の原点となっていきました。
しかし肝心(かんじん)の担い手さがしは難航。当初は県外からの新規就農者などを想定し、実際、希望者と面接もしてみたものの、逆に「ゆいまある」の原点に戻って考え直すことに。
足元にいた二人の若者
すると…「いるではないか、足元に。よい担い手候補が。青年の子どもをもつ農民連会員もいるし、若者は地域にもいるはずだ」(根本敬・福島県連事務局長)。そうやって探し出し、声をかけたのが、両親が農民連会員という根本大輔君(17)と、親友の藤本郁弥(ふみや)君(18)の二人でした。大輔君いわく「ゆいまある」には「畑に誘われ行ってみたら、あっと言う間に巻き込まれていた」そうですが、炎天下での消毒や除草の作業もこなしてきた二人の「食べ物を育てるのは楽しい」という言葉は、とても力強いものがあります。
トマトジュースの味に自信
安達太良山を遠望するなだらかな斜面に広がる「ゆいまある」のトマト畑。八月十八日は、うす曇りの絶好の収穫日和のなか、会員の消費者も参加しての収穫作業日です。ところが肝心(かんじん)のトマトが見えません。目の前は一面の草っ原。郡山農民連会長の宗像孝さん、ボソッと「すごい草だなぁ…」。根元をかき分けると、実ってました!赤いトマトが! コンテナ二十二個分、約四百四十キロを汗をかきかき収穫し、二本松市内の加工場で、みんなでジュースにしました。収穫も加工も猛暑の下の重労働。なかでも黙々と、まめまめしく働く「担い手」の大輔君と郁弥君の姿が頼もしい。
さて、みんなの汗の結晶のトマトジュースの味は…。「濃い!」というのがみんなの感想。市販のジュースとはまったくの別物、力強い大地の恵みをたっぷり味わえます。
応援者が次々と現われて
一方で「ゆいまある」の心は、地域や消費者にも広がり始めました。トマト畑に農地を提供した久納(くのう)みき子さんもその一人。ご主人が他界した後、「肥沃な農地なのに、なんとか荒らさない方法はないものか」と悩んでいました。「『ゆいまある』で活用されてとてもうれしい。農民連の仲間の力は本当にすごい。入っていてよかった」と明るい笑顔です。
加工所も農民連会員の武藤善朗さんが責任者をつとめるリンゴの集荷・加工施設「羽山果樹組合」の協力を得られることに。「もの作りは私たちも大好き。力になれてとてもうれしい」と武藤さん。
収穫作業にも参加した佐藤拓さんは、農家経営のパソコンソフトの制作会社を経営。「農民連のチャレンジ精神はすごい。この先、どう発展していくか興味シンシン。応援していきます」。
会員大募集中
市民が、年会費一万千五百円で会員になると、(1)年三回、トマト・ニンジンのジュース、カボチャスープのお届け、(2)共同作業への参加、(3)スローフードを楽しむ収穫祭への参加ができる。
担い手は、野菜を作り、ジュースに加工。三年以上働き、独立して農業を営む担い手には、年会費の一部から資金を援助する。
▼申し込み先 あだたら産直センター 電話0243(53)2426
◇訂正 10月1日号にて、以下の訂正がありました。
九月二十四日付1面「ゆいまある」の記事中、「武藤善郎さん」のお名前は「善朗」の誤りでした。お詫びして訂正します。
2007年10月9日、訂正しました。
(新聞「農民」2007.9.24付)
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