旭爪あかねさんの2つの作品
農業の喜び・未来性をリアルに表現した書と
馬場徹さんの評論「農の詩学へ」
第7回民主文学新人賞佳作に
書くきっかけは…
“もの作ってこそ農民”の文章を読んで
日本民主主義文学会は第七回民主文学新人賞を発表しましたが、佳作に選ばれた作品の中に、馬場徹さん(愛知県岩倉市、一九五二年生まれ)が著した評論「農の詩学へ」があります。この作品は、選考委員会の一人、平瀬誠一さんが「農業をモチーフとした日本の近代文学―国木田独歩、長塚節、小林多喜二、宮沢賢治、久保栄、木下順二、幸田文らの作品を『飛び石づたい』に論じながら、結論的に旭爪あかね氏の『稲の旋律』と『風車の見える丘』の作品世界の到達の新しさを立証しようとしたもので、なかなかの力作である」と評しているように、日本の農業と文学とのかかわりを深く考えさせられる内容となっています。
馬場さんがこの作品を書こうとしたきっかけは、農民連顧問の小林節夫さんがある雑誌に「ものを作らないような運動はだめだ。いままでの農民運動にはものづくりの話はない。ものを作ってこそ、農民なんだ」と書いた文章を読んだこと。この「ものをつくる」というテーマをイメージして、これまで読み込んできた文学作品を読み直してみたら、それが見事につながったのでした。そして「それらの文学的な諸表現を、もしひとつの線としてないあらわすことができれば、日本文学のゆるぎない伝統として、食料自給率四〇%、農業就業者の激減をもたらしている今日の現実に対抗させてゆくことができるかもしれない」という思いに。
この作品の大きな特徴は、「旭爪あかねの『稲の旋律』と『風車の見える丘』を、農を描く文学として位置づけ、本格的に論じた初めての論考」(選考委員会の一人、宮本阿伎)です。馬場さんは旭爪作品の特徴をいくつかあげたなかで、「とくに画期的なことなのだが、農業の喜びや未来性をリアルに、そしてみずみずしく表現し、農業の価値や展望を提供しようとしていること」と規定しています。そして、こうも書いています。「『風車の見える丘』というタイトルは象徴的である。それは『ある』のではなく『見える』だけなのだ。その『見える』ものを手近にひきよせるひとつの筋は、この小説にちらりと登場する『全国農民運動連絡会』の人々のどよめきかもしれない」と。この「全国農民運動連絡会」とは、まさに農民連のことです。
馬場さんが文学や小説に関心を持つようになったのは、小学校に入学するとき、おじいさんからもらったマーク・トウェインの「トム・ソーヤーの冒険」と「ハックルベリー・フィンの冒険」をボロボロになるまで読んだことから。これからも、「日本の古典文学を勉強して、現代文学に結び付けていけるような仕事をしたい」と抱負を語ってくれました。そして「最近、農業の記事が新聞に載っていると、必ず読むようにしています。特に若者が載っていると、めちゃくちゃうれしい」そうです。(馬場さんの作品は、『民主文学』六月号に掲載されています)
(新聞「農民」2007.9.3付)
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