「農民」記事データベース20070326-773-07

国際穀物情勢
06年が激変の始まり?


「貿易」より「食料」を優先に

日本では 自給率向上ますます重要

 WTO交渉がなかば「凍結」し、二国間・地域間でのFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)交渉が主流となった二〇〇六年。その一方で、世界農産物市場に激変が始まる年ともなりました。

 地球温暖化によるオーストラリアの大旱魃

 まず、〇六年にオーストラリアを襲った史上最悪の大旱魃(かんばつ)。アメリカと並ぶ世界最大の農産物輸出大国オーストラリアが、エルニーニョの影響で、小麦で六割、米では九割の減収で、畜産にも大きな影響が及びました。水不足や塩害で、〇七年も影響が避けられないと言われています。日本がFTA交渉を開始するオーストラリアでの被害は、いつどのように解決するのか、引き続きどこで同じような災害が発生するのか、まったく予想もできません。もしかして、スポンサーの石油・自動車資本を擁護して京都議定書から脱退を宣言したアメリカが、襲われることになるのかもしれません。

 中国の食肉消費増大と穀物輸入

 一方、経済成長を続ける人口十三億の中国が食肉消費を増大させ、飼料原料や搾油用大豆を含め穀物の輸入急増が、決定的となりました。さらに、アメリカはじめ各国政府が推進する代替燃料としてのバイオ・エタノール開発が、トウモロコシなど穀物需要を急増させ、〇六年には国際価格が急騰し、日本など飼料用穀物輸入国に影響をもたらしています。トウモロコシが飼料用穀物ではなく、バイオ・エタノール用になる可能性があるとさえ言われています。二八%という穀物自給率で、とくに海外輸入依存の高い日本の畜産は、根本的見直しが避けられません。

 〇六年に始まったこれらの動向は、貿易交渉よりも食料安全保障問題が優先課題であること、とりわけ日本における食料自給率向上対策の重要性を浮かび上がらせています。

(山本博史)

(新聞「農民」2007.3.26付)
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2007年3月

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