特定政党への支持押しつけ
“農協ぐるみ選挙”すぐやめよ
“思想・信条”侵す違法行為
関連/山田後援会の活動中止せよ
山田全中前専務理事自民党参院選候補
“農業を守る農民の代表”どころか
改憲・農業つぶし・農協解体の人物
七月の参議院選挙に、全国農協中央会(全中)の前専務理事、山田俊男氏が、自民党の公認候補として立候補を予定しています。現場ではいま、同氏の後援会への加入や会費納入などを、事実上の業務命令で農協職員に強制したり、生産組合長を通じて組合員農家に後援会への加入を取りまとめさせるなどの動きが、全国で広がっています。
しかし、こうした“農協ぐるみ選挙”は、協同組合の大原則である思想・信条の自由を侵すものであり、公職選挙法上も許されません。そして、農業・農民の切り捨てや「農協解体」攻撃をしかけてくる「財界農政」に拍車をかけるものにほかなりません。
日常の業務体制を後援会に移行
山田氏の出身地、富山県。県中央会の玄関ロビーには四人の専従者や職員OBを動員した後援会事務所が設置されています。JA高岡市では、組合長が後援会の会長、常勤役員の全員が副会長、総務部長が事務局長。日常の業務体制がそっくり後援会に移行しています。また、山田氏が住んでいる千葉では、JAいちかわの広報誌に山田氏の選挙広告がデカデカと掲載される事態も。
一方、こうした動きをはねかえしている農協もあります。滋賀県のJA北びわやJAレイクいぶきでは、農民連会員などの抗議を受けて、「あくまで任意、個人の判断にまかせる」ことを確認。農協の名前で後援しない、職員に強制しない、農協の資金は使わないことなどを申し合わせています。
農民の願いを自民候補に託せぬ
自民党公認候補の山田氏は“農業を守る農民の代表“をアピールしていますが、ここまで日本農業を危機に追い込み、農民や農協経営に塗炭の苦しみをもたらしてきたのは、自民党農政の結果にほかなりません。安倍内閣は、戦争する国づくりにむけた憲法改悪を参議院選挙の最大の争点に押し出しています。品目横断対策で多数の農家を農政の対象から締め出し、財界の意を受けて「農協解体」をねらっているのも自民党です。
農水省は、完全自由化したら食料自給率が一二%にまで低下するという試算を出していますが、日本を「農業のない国」にしてしまいかねないのが、財界と自民党です。こんな自民党候補に、農民の願いを託すわけにはいきません。
やめさせるため広い共同を
全農協労連の老田弘道委員長 私たちは、農協に働く職員でつくる労働組合です。山田選挙では、理事会決定や総務部長名などで、後援会加入や五人紹介運動、カンパ要請などの文書が職場に回り、半ば強制されている実態が全国からたくさん寄せられています。
そこで私たちは、二月二十二日に全中の宮田勇会長あてに、農協「ぐるみ」選挙をただちに中止するよう申し入れました。その柱は、第一に政治的信条の自由を侵すものであり、第二に特定政党の押し付けは、協同組合の政治的中立の原則を侵すこと、第三にコンプライアンス(法令遵守)のうえからも許されない行為だ、ということです。全中は、「業務命令はしていない。そういう事実があれば遺憾だ」などと回答したので、文書で指導を徹底するよう重ねて要請しました。
こうした選挙運動をやめさせるために、農民連はじめ多くの人たちに共同を呼びかけます。
押し付けは農協の自殺行為
農業ジャーナリストの大野和興(かずおき)さん 山田候補を押し立てての今回の農協選挙は、おおげさではなく民主主義の破壊行為である。協同組合が協同組合であるためには、欠かせない二つの条件がある。ひとつは権力からの自治・自立、もうひとつは思想信条の自由を含む組織内民主主義だ。
自民党という特定政党の公認候補を、強引に組合員農家や職員に押し付ける山田選挙は、この二つを踏みにじっている。農業の破壊を進めてきたのは自民党農政であり、しかもその自民党は憲法九条を変え、戦争国家を作ろうとしている。
そんな候補を組織内候補であるとして、組合員農家や職員に押し付けるようなことは、市町村農協は、よもややらないだろうと信じている。なぜなら、それは農協の自殺行為に他ならないからだ。そんなことをすれば、世論を敵に回し、経済界の農協解体論に手を貸すだけの話である。
となみ野農協に 富山県農民連が申し入れ
富山県のとなみ野農協(砺波市・佐野日出勇代表理事組合長)では、「組合長」名で各生産組合長に対し「山田としお後援会入会申込について」という文書を配布、組合員農家に「リーフレットと入会申込書の配布及びとりまとめ」を依頼するなどしています。
富山県農民連の南弘志砺波地域代表らは、となみ野農協に対して「協同組合の原則を蹂躙(じゅうりん)する『山田としお』後援会の活動中止を求める」申し入れを行いました。
これに対して、農協は「強制しているわけではない。お願いしているだけ」と言い訳に終始し、申し入れ後も、農協本館入り口のポスターはそのまま。このような農協の姿勢に、農家から批判の声があがっています。
(富山県農民連 多田裕計)
(新聞「農民」2007.3.26付)
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