「農民」記事データベース20070319-772-07

改憲手続き法案〈下〉
そのカラクリと“毒”

自由法曹団・改憲阻止闘争本部
坂本 修本部長に聞く


改憲のねらい、急いで知らせよう

たたかい大きく広げ必ず廃案に

――与党と民主党の間で、修正の話が進んでいると報道されていますが。

 坂本 修正協議によって、法案のカラクリと“毒”はなくなったのかというと、危険な中身はなんら変わっていません。民主党内に動揺がおきており、現時点ではまとまっていません。しかし、改憲政党間のあれこれの矛盾や思惑の違いをあてにしていたら、まとめられてしまう危険があります。

 世論が勝負

――いま、こういう重大なときに、たたかいを進めるうえで何が大事ですか。

 坂本 「中立の手続き法だからいいじゃないか」という当初の宣伝は、安倍首相の最近の言動で崩れていますが、中身がどんなにひどいかということは、まだ知られていません。マスコミはこのカラクリについて、まったくといっていいほど報道していません。私は、この法案が国会に上程されてから、全国各地で四十〜五十回、学習会などで話してきましたが、この法案の中身を知ったら、みんな本当に怒りだします。いま一番大事なことは、この法案のねらいを一人でも多くの国民に一刻も早く知らせることです。

 改憲政党が絶対多数を占める国会で、いままで成立させられなかったのは、国民はこの法案を望んでいないし、改憲も望んでいないということがあるからです。あまりのひどさは、日本共産党や社民党の議員の奮闘で、次々にあばかれています。国会外でも法案反対の声は、急速に広まっています。

 自由法曹団は、国民といっしょに人権を守ったり、悪法に反対する活動を通じて、「真実は勝利する、大義はつよい力を持つ」という法則をつかんできました。私たちが真実をひろげていけば、法案成立をくいとめることができます。有権者一人一人が「九条守れ」「改憲のための不公正な手続き法反対」の思いを国会議員に突きつけ包囲していくことが求められています。世論が勝負、それを作るのは私たち一人一人の活動だという原点をしっかり踏まえてがんばることです。

 農民の中に

――いま農民連は、九条田んぼや農村でのキャラバン宣伝など、“平和でなければ農業は発展しない”と訴えています。

 坂本 私は農村県の秋田県に生まれました。私は、兄の出征を見送りましたが戦病死しました。私がたしか一年生の時の代用教員は女性の若い先生でしたが、「満蒙開拓義勇団」のお嫁さんに行き、帰ってきませんでした。

 戦争は惨たんたる被害を国内外にもたらしました。そうした反省から、非武装・非戦の平和主義、国民主権、基本的人権の尊重をかかげたいまの憲法が生まれ、その後アメリカと日本の支配層からいろんな傷は受けたけれども、六十年の間、私たちはこの憲法を守ってきたわけです。それがいま、「九条が世界の宝だ」と言われるまでになっていることに、もっと自信をもっていいのではないでしょうか。

 私は、改憲のねらいを阻止してこの憲法を生かしきったら、農民も労働者も市民も、本当に生まれてきてよかったという日本を手に入れることができると確信しています。憲法を守るたたかいは、私たちが本当に歴史の主人公に変わっていくたたかいです。その時代に生まれ合わせたことを、私はたいへん幸せだと思っています。

 私が弁護士になって間もない一九六〇年は、安保反対のたたかいの最中でした。その時、自民党議員を震え上がらせたのは、自分の選挙区の田んぼのあちこちに“安保反対”という旗が立っていたことでした。

 痛撃与える

 当時と歴史の条件はさまざまに違いますが、いま「九条の会」が全国で六千を超えました。私は、全国各地をまわって、いままで経験したことのない共同と世論が広がっていることを実感します。改憲手続き法案を廃案に追い込めば、改憲策動それ事態に痛撃を与えることになります。法案を阻止し、憲法を擁護し、憲法を暮らしに生かす。このたたかいになんとしても勝利したい。皆さんのご活動に期待します。

(新聞「農民」2007.3.19付)
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2007年3月

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