「農民」記事データベース20070305-770-07

農民連女性部総会の発言から

日比EPAによる看護士受け入れ

岐阜 可児すみ子さん


比は日本以上に不足状況
絶対にやめてほしい

 日本とフィリピンとの間でEPA(経済連携協定)が合意されました。以前から「看護師の足りない分をフィリピンから補う計画がある」と聞いていました。「言葉がわからないのにどうするのか? 日本語をマスターして来るのだろうか?」と疑問に思っていました。

 日本でも不足、差別されやる気なくなる

 私たちナースは、結婚後も勤務したいと思っても、子どもが生まれると、育児をしてもらえる人を探さなければいけません。私も農業をやっている義母に、子育てをしてもらいましたが、核家族はとてもたいへんです。夜勤しないと、とたんに給料は下がり、保育料は一人五万円ぐらいになります。子どもが二人になったり、延長保育をお願いすると、とてもやっていけません。子育ての時期は、仕事をやめるしかありません。または独身で通すしかないのです。

 いま病院は、点数の見直しと、経費の削減で、人件費を抑えています。評価主義がまかり通り、職場は働きにくくなっています。自分の患者以外は、手がまわらないため、後回しにされてしまう。患者さんは、声をかけにくく、人としての関係は薄れていくように思います。

 患者さんは、命を預けて、安心して治療ができるのか不安です。指導のある人(評価のいい人)一割、だめな人一割、普通の人八割と決められると、いくらがんばっても差別され、やる気がなくなってしまいます。

 ベッド掃除やおむつ交換しかできない

 そんななか、知り合いのナースから、次のような話を聞きました。

 五人ぐらいのフィリピンからの研修生がやってきました。英語しか話せないため、手振り身振りになり、何もできません。「ありがとうございます」「お大事に」「どうですか?」「失礼します」としか言えないため、ベッドメーキングとベッドの周りのそうじ、おむつ交換しかやってもらえなかったとのことです。

 フィリピン人研修生が「給料が安い」と訴えていましたが、そのまま放置されていました。ところが、患者さんの物やお金がなくなったと訴えが次々出てきました。生活ができないほど安かったのでしょう。半月もたたないうちに皆いなくなったようです。お金がなくては、フィリピンに帰れないでしょう。その後、この人たちはどうなったのかはわかりません。

 日本の人口十万人当たりの看護師は八百五十九人。これでも不足です。フィリピンでは四百十八人で、日本の半分です。それを日本が奪うことは絶対やめるべきです。

 外国人労働者を安く使う“隠れみの”に

 協定のもう一つの問題は、インドネシアからホテル従業員を迎えることです。これは、外国人を安く使う隠れみのです。外国人研修員は二年間で七万円。その後は最低賃金が適用されるという建前になっています。

 さらにフィリピンを日本の産業廃棄物処理場、ごみ捨て場にする問題です。ヒ素、水銀などが含まれる灰や医療廃棄物などを受け入れる条項もあります。日本政府のやり方に、日本人として恥ずかしい限りです。

 日比EPAの協定書には、フィリピン側の条項が省略され、日本人には、産廃のことは知らされていませんでした。フィリピン上院本会議が批准を見送ったため、二〇〇七年度からの受け入れが困難になっています。フィリピンでの反対運動が盛り上がっています。私たちも働きやすい職場にするために、もっと声をあげ、安心して医療が受けられる保険制度にしたい。国民が大事にされる憲法九条を守りたい。

(新聞「農民」2007.3.5付)
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2007年3月

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