「農民」記事データベース20070305-770-05

築地市場(東京)の移転問題

現在地での再整備を

環境学会・科学者会議 シンポ開催


 「都民の台所、築地市場の豊洲移転はやめよ」と二月十一日、都内で「築地市場の豊洲移転を考えるシンポジウム」が開かれました(写真〈写真はありません〉)。主催は、日本環境学会、日本科学者会議公害環境問題研究委員会。

 石原慎太郎都知事は、築地市場を豊洲に移転し、跡地に東京オリンピックのメディアセンター建設を計画しています。移転予定地は、環境基準値の千五百倍のベンゼン、四十九倍のヒ素、二十四倍の水銀など発がん物質による土壌汚染が深刻です。

 日本環境学会会長の畑明郎さん(大阪市立大学教授)は、大阪市が進める大規模開発・大阪アメニティパークの地下水から基準値を超えるヒ素やセレンが検出され、汚染を隠してマンションを販売していた事例を紹介。府警が強制捜査に動き、住民も補償交渉を行ったが、対策は不十分なままだと強調しました。

 同学会副会長の坂巻幸雄さん(地質学者)は、首都直下型地震が三十年以内に発生する確率が七〇%であると指摘し、「豊洲地域では液状化が起こり、汚染物質を含んだ汚水が吹き上がる恐れがある」とのべました。

 豊洲で検出された有害物質の人体への影響について、岐阜環境医学研究所所長の松井英介さん(医師)が報告。ベンゼン、シアン、ヒ素などを人体に摂取した場合の症状や環境への影響を紹介しました。

 一橋大学大学院の佐藤克春さんは、調査範囲が狭く、汚染地域を「立ち入り禁止」にさえすれば、土壌処理をしなくてもよいなどの土壌汚染対策法の問題点を指摘しました。

 討論では、学校法人服部学園の服部津貴子さんが、「食の安全に不安を持ちながら食材の調達はできない」と懸念を表明。日本消費者連盟の吉村英二さんは、ねらいが一等地の築地を売却して、再開発で巨利をむさぼることにあると批判。「なぜわれわれが都の借金のツケを払わなければならないのか」と疑問を投げかけました。

 仲卸業者などで構成し、移転に反対する「市場を考える会」の山〓(※)治雄代表は、業者の間でも、現在地での再整備が多数であるとのべ、「移転は世界に例のない暴挙だ」と訴えました。仲卸の労組、東中労の羽根川信委員長は、セリ制度を破壊し、大型量販店の利潤追求の場にする豊洲移転の本質を暴露しました。

 主催二団体は「築地市場の豊洲移転に反対し、現位置での再整備を要求します」とのアピールを発表しました。

※〓は、「崎」の異体字、つくり(右半分)の上が「立」、ただし、下の横一はなし。

(新聞「農民」2007.3.5付)
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2007年3月

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