「農民」記事データベース20070115-763-11

旬の味


 今年は亥(い)年。猪(いのしし)といえば何より農作物の被害を連想する▼山村に人が暮らせなくなるにつれ、猿や熊(くま)も里へ下り、農作物の味を覚えて山へ帰らなくなった。栄養に富む農産物を食べるから害獣も増え、農林業はさらに荒廃する▼昨年六月改正の鳥獣保護法の目的は「鳥獣の保護」と「鳥獣による生活環境、農林水産業に係る被害を防止し…」とあるが、農林業や農民の被害については一言もない。害鳥獣駆除を制限するだけの法律だ▼三百年前「生類憐(あわれ)みの令」の中には、お犬様を登録保護し、赤犬行方不明の場合、代わりの赤犬をもってきて数を合わせるなどけしからんというのもある。現代は―と殺制限よりも多く猪を撃ってしまい、隣村の枠をもらってつじつまを合わせて県に申告した例もある。まさに「生類憐みの令」現代版ではないか▼「諸君はこの時代に強ひ(しい)られて/奴隷のや(よ)うに忍従することを欲するか/むしろ諸君よ 更にあらたな正しい時代をつくれ」(宮沢賢治「生徒諸君に寄せる」)。猪突(ちょとつ)しろということか。

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(新聞「農民」2007.1.15付)
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2007年1月

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