「農民」記事データベース20070108-762-01

設立30年迎えた柏木水稲生産組合

農業つぶしの嵐のなか
組合が営農を支える砦

千葉・酒々井

 緑豊かな農村と駅近辺の住宅地が混在する千葉県酒々井(しすい)町。同町にある柏木水稲生産組合は、兼業農家を中心に12戸で組織する作業受託組合です。昨年、設立から30年を迎えました。特徴はもちや糀(こうじ)、味噌(みそ)など農産加工を積極的に手がけていること。そして何より後継者が立派に育っています。


後継者も立派に育っています

 師走を控えた土曜日に町役場で開かれた「酒々井町ふるさとまつり」。組合はつきたてもちを販売しました。テントの前でもちつきを披露する男衆。女衆はつきあがったもちを手際よく丸め、あんこやきな粉をからめていきます。女衆に、組合が長続きする秘けつを尋ねると「みんな仲良く、和気あいあい」という返事が返ってきました。

 組合員は同じ集落で世代も近く、家族ぐるみの付き合い。決め事は年二回の寄り合いで決め、慰労旅行には夫婦や親子で参加します。竹尾重尚さん(46)は「組合には、世の中が失いかけている“お互い様”の精神がある」と話します。

 農産加工して「一石三鳥」

 でも、後継者が育つ理由はそれだけではありません。男衆は「組合があるから農業を続けられる」と口をそろえます。組合が営農を支える砦(とりで)になっているのです。

 組合は三十年前、高価な農作業機械を各戸で持つのではなく、共同で所有し、組合員と地域の田んぼを効率的に作業する目的で設立されました。現在、組合員の水田十四ヘクタールの他に三・五ヘクタールの作業を受託。組合員の秋の稲刈り・乾燥・調整は十アール当たり一万八千円で、これは町内平均のほぼ半額です。

 なぜ、こんなことが可能なのか―。組合は、組合員が作った米などを、もちや糀、味噌に加工し、付加価値を付けて販売、利益の一部を組合の運営費に還元しているのです。組合員にとっては、作ったものが売れ、日当も入り、委託料も安く済むという「一石三鳥」のとりくみ。清宮光雄さん(50)は「組合員の半数はもち米を作っている。加工が確立したからやっていける」と言います。

 設立時に苦労乗り越え今も

 にぎやかにもちをつくテントから少し離れた所で、おこわや切りもちを売る竹尾みよさん(73)と清宮すえさん(73)は幼なじみ。そして、そう、重尚さんと光雄さんの母親です。二人は代替わりした後継者に目を細めながら「私らはもう引退だよ。若い人らがまとまってよくやっている」と。その一方で、翌日開かれる朝市の準備に余念がないのはさすが! ここ酒々井町は毎週日曜日に役場駐車場で朝市が開かれることで有名で、二人はその朝市組合の現役バリバリのメンバーです。

 今でこそ農産加工を取り入れてうまくいっている組合ですが、設立当初はたいへんな苦労をしました。中心メンバーだったみよさんの夫、裕知さんが事故で設立から半年後に急死。一緒に設立を準備してきた竹尾忠雄さん(千葉県農民連副会長)は「みよさん、すえさんをはじめ女性がトラックも運転し、活動の中心を担った」と振り返ります。

 購入した機械の借金を返すために、自分たちの田んぼを後回しにして、委託料が入る受託水田の作業を優先したことも。「あのころは今と違って便利でなく、とにかく体で働いた」とみよさん。その困難を乗り越えてきたからこそ、いま若い人たちが継いでがんばっていることへの感慨もひとしおです。

 生き残れない品目横断対策

 政府は今年から品目横断対策をスタートさせます。それは輸入自由化を前提に施策の対象を大規模農家や法人経営などに限定するもの。しかしその対象になったとしても輸入農産物との競争に生き残れるという保障はどこにもありません。

 一方、柏木水稲生産組合は兼業農家が中心で、政府のものさしで計れば規模も“零細”です。しかし、力を合わせて農地を守り、農産加工も豊かに展開し、地産地消と結びついて立派に地域農業を守っています。

 農業つぶしの悪政の嵐が吹き荒れるなかで、スクラムを組んで後継者を育ててきた柏木水稲生産組合のとりくみ。その先に、日本農業再生の道が見える気がします。

(新聞「農民」2007.1.1・8付)
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2007年1月

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