「農民」記事データベース20061211-760-02

NAFTA13年目
メキシコ農業の実情(上)

関連/食品分析センター募金者氏名(敬称略)


12年間でばく大な税収損失

 主食のコーンが飼料に奪われた

 WTO交渉の長期にわたる凍結が、アメリカ中間選挙結果からも確実になりつつあるなかで、日本の政府・財界もFTA・EPA締結に全力投球をはじめています。

 一九九三年一月に発効したNAFTA(北米自由貿易協定)は、世界で最も早く開始されたFTAであり、すでに十三年目を迎え、「すべての農産物に例外なしの関税全面撤廃」という最終段階まであと一年一カ月を残すだけとなっています。このNAFTAのもとにおけるメキシコ農業の推移と実情は、多くの教訓を学べる世界のモデルといえます。

 輸入枠超過分もすべて無税扱い

(図)メキシコの無税トウモロコシ輸入に伴う国庫損失 コーンは、トルティージャ(トウモロコシを原料にしたクレープに似た食品)や、ポソーレ(トウモロコシと豚肉のスープ)など、日常欠かすことのできないメキシコ料理の重要素材です。国民にとって主食の一つといえるコーンは、センシティブ農産物とされ、「例外なしの関税撤廃」とされたアメリカとの協定でも、(二〇〇八年一月一日まで)最長十五年間という猶予期間が与えられてきました。

 ところが、せっかくのこの位置づけにもかかわらず、NAFTA発足後のメキシコ政府は、協定から大きく逸脱して、無税枠を超える輸入に高率関税をかけることをせず、限度を上回るすべての輸入コーンを無税としてきました。これによる政府の税収損失は、これまでの十二年間の累計で、図のように三十三・六億ドルにおよんでいると試算されています。

 アメリカからパッカーが進出

 アメリカからのコーン輸入は、九一年の百三十一万トンから〇五年には五百八十万トンへと四・四倍に増え、メキシコはいま日本に次ぐ第二位のアメリカ・コーンの輸入国です。しかも、アメリカから次々と有力な飼料会社や鶏肉・豚肉加工業者(パッカー)が進出して、飼料用需要の割合が一一%から四五%に増加、食用に大きな影響をおよぼすようになっています。アメリカから協定逸脱の無税で輸入されたコーンは、アメリカから進出したカーギルなど飼料会社によって配合飼料にされ、これをエサにして育てられた豚は、アメリカから進出した食肉パッカーが安い現地労働者をつかって加工、日本向けに輸出するというのが太い流れになっています。

 メキシコにおけるコーンの国内自給率(国内消費量に対する国内生産量)は、九二年の一〇〇%から〇五年には六七%まで低下しています。

(つづく)


ありがとうございました

食品分析センター募金者氏名(敬称略)

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※〓は、「木」+「無」。

(新聞「農民」2006.12.11付)
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