税金から地域農業守る取り組みへ組織も活動も広がった農民連山陽支部 岡山県赤磐市山陽地区(旧山陽町)里山の木々が赤や黄の彩りを濃くし、刈り取りを終えた田んぼは静かなねむりについています。落ち着いた晩秋の雰囲気を漂わせる岡山県赤磐市の山陽地区(旧山陽町)。ここはまた県内有数の桃の産地でもあります。岡山県農民連の山陽支部は税金の取り組みを通じて、この数年で会員を約七倍に増やし、四十人近い組織になりました。そして今、多面的な農家の要求に目を向け、組織も活動も飛躍させようとしています。
会員を数年で約7倍にふやしてきた原動力は税金の取り組み農民連の税金運動にほれ込んで「これまで会員を増やしてきた原動力は一にも二にも税金のとりくみ」と話すのは、支部のまとめ役で県農民連の執行委員でもある西岡道晴さん(67)。JRを退職後、特産の黄ニラなどを作っています。農民連に出合ったのは六年前。“収入は一切ごまかさず、経費はチリ一つ見逃さない”農民連の自主申告の運動にすっかりほれ込みました。そして今年も二人の新会員を迎えています。「年金控除や老年者控除が縮小・廃止されるなかで、仮に所得税がゼロになっても、ちゃんと計算して申告しなければ住民税や国保料などでたいへんなことになる」と、警鐘を鳴らします。 桃やブドウなどの観光農園を営む戸田義政さん(70)も、税務調査に入られたことがきっかけで入会しました。その時、農民連の人たちは三日三晩かけて調査対応の記帳のやり直しを手伝ってくれたそうです。
固定資産税や農薬の学習会も戸田さんは今年、固定資産税の異議申し立てをおこない、不当に高い税額の引き下げを勝ち取りました。その経験から、「税務署や役所の言いなりでは、払う必要のない税金まで払わされる」と言い切ります。その戸田さんに紹介されて入会した小坂一さん(65)も「最初はまゆつばだと疑っていたけれど農民連に入って本当によかった」と。また、千房美和子さん(75)、内山勝美さん(67)も「泣きたくなるほど取られていた税金が農民連に入って半分になった」「以前は税理士に頼んでいてものすごく高い料金を取られていた」と喜びを口にします。 岡山県農民連の坪井貞夫会長は、山陽支部について、「税金の取り組みを通じて『農民連に入ってよかった』という思いが共通認識になっており、その確信がポジティブリスト制度の学習会や固定資産税のとりくみなど、農業そのものを守り発展させる運動の広がりにつながっている」と評価します。
販路広げるよう行政に要望を…旧山陽町は、桃などの果物や黄ニラ、エンダイブ(特有の風味をもつサラダ用の野菜)といった特産品の生産が地域農業を支えています。その一方で、岡山市と隣接する同町にはベッドタウンとして大規模な住宅団地が開発されてきました。開発は農村にいろいろなひずみをもたらすと同時に、例えば桃の季節ともなれば農産物直売所は、近隣の消費者でたいへんなにぎわいを見せるようになりました。特に近年、果物全般の市場価格が低迷しているなかで、直売など地産地消に対する農家の要望はますます強くなっています。この日の話し合いでも「行政にもっと積極的に販路を広げるよう要望していったらどうか」といった声があがりました。
組合員もっとふやし飛躍しようこうした地産地消のとりくみを、農協や行政と一緒に進めていく土台も山陽支部は作ってきています。四月に農民連食品分析センターの石黒昌孝所長を招いて役場の会議室で開いたポジティブリスト制度の学習会は八十人が参加して大盛況。農協や役場の関係職員も参加して認識を新たにしました。夏に行った県内いっせい農協訪問では、JA赤磐の組合長と腹を割って話し合い、多くの問題で見解が一致したそうです。また、来年からスタートする品目横断対策も、地域農業を守るうえで大問題。個別経営にしても集落営農にしても、助成を受けられる規模要件を満たすのはほとんどないと見込まれるからです。 まとめ役の西岡さん、戸田さんはともに農業委員。「よし、受け持ちの区長を集めて行政と農協に説明させよう。そうすれば農家の関心も高まるはず」「合わせて農民連の品目横断対策に対する見解を説明することも大事だ」といった提案も次々と出されました。 生産から販売、税金、福祉や暮らしの問題に至るまで、地域農業の現場にはさまざまな要求が渦巻いています。「近いうちに農民連として農家の要求をまとめて対市交渉を行いたい。自治体合併で農家の議員も減り、農業問題の提言は農民連で行えるようにしたい」と西岡さん。「そのためにも地に足をつけた活動を行い、組合員ももっと増やさなければ」と力強く語っていました。
(新聞「農民」2006.12.11付)
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[2006年12月]
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