「農民」記事データベース20061204-759-10

旬の味


 時雨から雪に移る。その季節を鮮やかに彩るのは、赤い柿の実である。会津の“身不知柿”は手入れが良くないと大粒にならない。気候にも敏感で、今年は例年になく小粒だ▼その柿の実を“布施柿”と呼んで、渡り鳥のためにもぎ残しておく風習が会津にある。寒くなれば渋柿は甘くなる。その実をついばみ、一休みして、鳥たちは南へ渡ってゆく▼農村のおおらかでゆったりした光景に心がいやされる。果実や農作物は天の恵み、たとえ自分の所有物であっても独り占めをしてはならない。そういう倫理観がそこにはある▼それを打ち砕いて、もうけのためにしのぎを削る。競争の原理は強いもの勝ち。負けたものはさらに弱いものに勝って順列をつくらなければならない▼その思想がいま“いじめ”を生んでいる。子どもたちの自殺の頻発は「そこから逃れたい」「その教育は間違いだ」という悲痛な抗議だ▼教育基本法に愛国心などと、見当違いも甚だしいことにうつつを抜かしていて本当にいいのか。いいはずがない。

(新)

(新聞「農民」2006.12.4付)
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2006年12月

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