ビア・カンペシーナ女性農業者リーダー会議(フィリピン)女性自立の運動 目の当たりにEPA反対の運動 手携えて「ビア・カンペシーナ 第二回女性農業者リーダー会議」が、十一月四〜七日、フィリピンのルソン島で開かれました。昨年は八月に韓国で開催。今回は、フィリピンの二つの農民組織(フィリピン農民運動=KMPとパラゴス・フィリピーナス)が受け入れました。インドネシア、韓国、ベトナム、日本から農村女性の代表が参加。女性農業者の権利の確立と保護、地位向上を実現するために、議論を交わしました。農民連からは、女性部役員の野田幸子さんと通訳として青年部幹事の杵塚歩さんが参加しました。
印象強かった食品加工・販売の取り組み4日間の日程で盛りだくさん…初日の説明会で「昨年の会議で何ができるかと議論して昨年十二月の香港行動の女性行進につながった。今回の会議を生かして、フィリピンの女性農民を理解し、連帯を高め、それぞれの国に持ち帰って国内・地域レベルで活動していきましょう」と、KWPA(韓国女性農民連合)代表のユン・グンスンさんがあいさつ。四日間という短い日程でしたが、ゴミの埋め立て予定地の見学、五人の活動家と農民が不当に拘束されている刑務所の訪問、農地改革庁での対話、ボカシ肥料作りのデモンストレーション、ろうそく作りと食品加工・販売の見学など、盛りだくさんの内容でした。現在、国会で審議中の日比EPA(経済連携協定)の影響もあり、「日本から来たというだけで、だいぶ質問や意見が私たちに集中した」と野田さん。特に、八十四ヘクタールのゴミ埋め立て予定地を見学した際、EPAで看護師を送る代わりに日本から有毒な廃棄物が「輸入」されるのではと心配する現地の人々から意見が集中。「この問題は、フィリピンの農民と日本の農民が対立しあうのではなく、お互い協力して日比EPAに反対する運動を広げていくことが大切」と訴えました。「この発言の後、“この日本人はいい人たちだ”と受け入れてくれるようになった」と言います。
確実に広がっている国際的な理解と連帯やせた土を農民の手で復活も…特に、二人の印象に強く残ったのは、パラゴス女性部の取り組み。訪問したソマロで、地域の女性七十人がグループを作り、一人毎月二十ペソ(約四十円)を積み立て、協力して事業を展開していました。作ったろうそく、お菓子、キャッサバ(タピオカでんぷん芋)を使ったケーキなどを販売し、売り上げをみんなで分配。収益の一部を会議費や人の派遣費用など、運動に役立てています。「みんな生き生きとしていた」と杵塚さん。「実際の生活に役に立つことをして、運動だけでなく、それを支える経済面もしっかりとさせていた」と印象を語ります。 ボカシ肥料作りのデモンストレーションでは、五月のビア・カンペシーナ東南・東アジア地域会議で来日したパラゴスの議長、ハイメ・タデオさんが実演しました。「まさかフィリピンでボカシ肥料を見るとは思わなかった」と野田さん。タデオさんが土着菌を使わずEM菌を沖縄から取り寄せていたことを残念に思ったものの「国際稲研究所に“フィリピンの農地は死んでいる”と言わせるほど、化学肥料によってやせてしまった土を農民の手で復活させられるかも」と期待します。
日本の情報は政府や大企業から全体を振り返って、「農地を商業、工業、娯楽施設建設に転用するために売却する地主が増えている中、その土地を耕す農民の手に土地の所有権を取り戻す運動は、農民連の“ものを作ってこそ農民”という理念と通じるものがあると感じた」(杵塚さん)、「土を耕して経済的に自立することが農村女性にとって必要。各地の実情に応じ、手をつないで運動していくことが重要だと感じた」(野田さん)とそれぞれ感想を述べていました。フィリピンの女性農民組織は、戸主である男性にだけでなく、農村女性にも農地の所有権を与えるよう求めています。各国の事情はそれぞれ異なりますが、お互い理解しあって、農業を支えている女性たちの権利を守ることで意見が一致しました。いま国際的な理解と連帯の輪が確実に広がっています。
(新聞「農民」2006.12.4付)
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[2006年12月]
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