「農民」記事データベース20061030-754-06

本の紹介

和田昌三著
“農民の父”と慕われる
郡上八幡出身・可児義雄の生涯

「労農提携」を先駆的に訴え資本家・地主とたたかった義民


 本書は、戦前、鉱山労働者、小作農民とともに命をかけて資本家、地主とたたかった義民の生涯を紹介した本です。可児義雄は岐阜県郡上市の出身。栃木・足尾銅山で炭鉱員として働き、組合活動に参加。秋田・小坂鉱山のたたかいで農民運動と出合いました。

 当時の鉱山一帯は、精錬所が出す毒煙でハゲ山が広がり、田の稲も実らない状態。可児は、煙害補償を求める農民と賃上げを求める労働者が力を合わせて資本とたたかう「労農提携」を先駆的に訴えたのでした。

 その後、全農秋田県連の委員長に選ばれた可児は、日本三大小作争議の一つ。阿仁前田(現在の森吉町)の小作争議を指導。二年間の獄中生活の後、四十歳の若さで生涯を閉じました。

 和田昌三さんは、小坂町や森吉町にある可児の碑や墓を訪ね、「墓には線香が絶えず、集会所には八十年前の農民組合旗とともに写真が飾られ今も秋田の農民の心に可児が生きていると感じた」と言います。そして、ぜひ故郷にも可児の碑をと運動し、昨年、六百人余の賛同を得て見事に建立しました。

 和田さんは「政治の右傾化や格差の広がりが問われる現代に、命をかけて正義を貫いた可児のような生き様をよみがえらせたい」と語っています。

(新聞「農民」2006.10.30付)
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2006年10月

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