演出された異様づくめの農協大会形骸化した議案討論と参院選の特定候補応援
実態や要求からかけ離れたもの第二十四回JA大会が十月十日、東京・渋谷で開かれました。NHKホールを会場にしただけに、見栄えはすばらしかったのですが、日本の農民・農村や農協が当面している実態や要求からは、あまりにもかけ離れた大会でした。農水大臣が予算委員会に出席しなければならないと、開会予定時刻の十分も前に幕が開けられました。六十歳を過ぎてやっと大臣になった松岡氏は、はじめに「皆さんのおかげで大臣になれた」とお礼のあいさつから。そして最後には、「全中前専務が(自民党公認で)参議院選挙に出馬を決めた。皆さんのご支援をよろしく」と選挙応援演説。これも農水大臣の仕事なのでしょうか。 続いて、東京フィルハーモニーによる演奏の後、全中会長による開会あいさつ。そして、安倍首相(下村副官房長官が代読)、日本生協連会長のあいさつと韓国農協中央会、国際協同組合同盟からのメッセージ紹介があり、大会議長が選ばれたのは、開会して一時間半後となりました。 大会議案の提案説明につづいて、代議員による「意見表明」となり、指名された四人による一人十分の発言が始まりました。いずれも、NHKお得意のハイビジョン映像で録画済みの所属農協や地域の活動を紹介した後、大会議案に沿って四つの重点項目をそれぞれ分担して実践報告。「これからもがんばります」というパターンです。
議案に対して意見でなく決意が翌日付の日本農業新聞では正直に「決意表明」と紹介されていた通り、議案に対する意見表明・討論といえるものではありません。大会規程によれば、「議案について意見を述べようとするときは、大会開会日の前日までに意見の要旨を書面で大会運営委員長に通告」とされています。しかし、NHKの録画済みの映像が象徴するように、この規程は完全に形がい化しています。しかもこの間、議長に代わってNHKの女性アナウンサーが進行係となり、座談会形式で「議事」が進められ、再び議長が登壇して大会議案と二つの特別決議が拍手で一括採択されました。 特別決議の一つは、「農政意思結集にかかる特別決議」という名で、「全国の農業者が心を一つにし、我々の意思を的確に農政に反映できる人物を必ず政治の場に送り出すべく、来る参議院選挙に向け総力あげて展開していく」というもの。 この特別決議が提案されている間、壇上の提案者の横には、予定候補の当人が立ち、会場に手を振る演出も行われました。三時間の大会のうち、「全国の農業協同組合の意思を決定する」討論(座談)らしきものは、ビデオ映像込みのわずか四十分間。会場の出口では、予定候補者が参加者に握手をしていました。
(新聞「農民」2006.10.30付)
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[2006年10月]
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