「農民」記事データベース20061016-752-02

次々廃止される測候所

農業・農民にはなくてはならぬ存在


 測候所の情報をもとに防霜作業を…

 気象庁の測候所が毎年少しずつ姿を消しています。十年前には九十六カ所ありましたが、現在は四十一カ所。さらに政府は今後五年間で全て廃止(無人化)する方針です。公務員の人件費削減が目的ですが、地域住民、農家へのサービス低下は避けられません。

 今年十月には、北海道の岩見沢、倶知安、岩手・大船渡、千葉・館山、長野・飯田の五カ所の測候所が廃止になりました。菅沼浩さんは、飯田市の隣町、松川町の果樹農家。同地域ではリンゴや梨の花咲く五月の連休前後、測候所の情報をもとに防霜ファンが回ります。「無人化しても観測データはこれまで通り出るそうだが、実際のところは来春にならないと分からない」と不安をのぞかせます。

 気象庁は、測候所がなくなっても、観測の自動化で「サービスに支障はない」と言い切ります。しかし無人化で、雲の動きや霜の目視観測、桜の開花、ウグイスの初鳴きなど、環境や気候の移り変わりを監視する生物季節観測がなくなることは明らか。晩霜対策をとっても、雲の出方で霜の降り方は変わるし、霜が降りたかどうか確かめることもなくなります。実際、今年四月の福岡県では、山間部で毎日のように霜が降りていたにもかかわらず、注意報は二回だけでした。

 人員削減と合わせ気象庁の民営化も

2006年10月現在の測候所 また測候所をはじめ地方気象台の職場でマンパワーが最も求められるのは大雨など災害時です。このような時、職員は、注意報・警報だけでなく、河川洪水情報や土砂災害警戒情報などさまざまな気象情報の発表や気象実況の監視に追われます。「自治体は、こうした情報を総合的に判断して住民に避難勧告などを出すのですが、人手が足りないため、市町村の防災担当者へ、気象台側から直接支援を行うゆとりがないのが現状です」と、全気象労働組合の冨安一弘委員長は指摘します。

 小泉「行革」のもとで政府は六月、今後五年間で測候所の廃止による三百三十八人と気象研究所の独立行政法人化による百七十四人の人員削減を決めました。しかしこの約二十五年間で国家公務員の総数は九十万人から三十三万人に減る一方、国債の残高は五十六兆円から八百八十兆円へと増えており、公務員の人数が国の借金の原因ではありません。

 また、人員削減と合わせて気象庁の民営化・独立採算制も論議されていますが、気象庁の仕事には海洋や火山の観測など長期の視野を必要とするものも多く、民間へ開放した天気予報にしても観測データは同庁が無償で提供しているのです。

 観測・防災機能の維持・強化こそ

 「全気象は、測候所の廃止に反対するとともに地域防災センターとしてその機能を引き継ぐことや、地域のニーズに合ったよりきめ細かい情報を測候所が提供していくことを提案しています」と冨安委員長。例えば、果樹・茶地帯の晩霜情報や林業地帯の落雷情報などが考えられるそうです。

 地球温暖化や異常気象の多発が伝えられる昨今、気象庁の気象観測・防災機能の維持・強化こそ求められます。

(新聞「農民」2006.10.16付)
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2006年10月

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