「農民」記事データベース20061009-751-03

農協全国大会議案の表と裏

大多数の組合員から離れて農協をどこへ導くのか


 「担い手」重点で他の組合員にしわ寄せ

 来る十月十、十一日の両日、東京のNHKホールなどを会場として、第二十四回JA全国大会が開催されます。すでに主催者の全中理事会から協議案が示され、集約されようとしています。議案は、全組合員でなく、担い手対策が重点とされており、「担い手には出向いての個別対応、その他組合員には組織対応」が貫かれ、購買事業でも、担い手には「相対価格」として、そのしわ寄せは他の組合員にという方向づけになっています。

 こうして大会議案は、政府・財界の推進する「農政改革」をそのまま受けて、全面的に現場で実行する方針ですが、これには大きな弱点があることを全中も認めざるを得ません。

 大会組織協議案は二分冊になっており、正式協議案のほかに「JAグループ内限り」と注書きのある関連資料編(別冊)があり、こちらではかなりリアルな分析が行われています。

 組合出資金の大幅減少傾向は止まらない

 まず、農協組合員の中で、事業利用はできても議決権をもたない准組合員が、全国平均で四五%を占めるにいたったことをグラフで示し、さらに正組合員の中にも今後「土地持ち非農家組合員」となって組合員資格を失う者が急増すること、また高齢組合員が脱退したあと、後継者による相続加入が行われないケースが三三・八%にのぼり、これに伴って組合の出資金が大幅に減少する傾向が止まらないことが調査結果として示されています。

 事業面では、貯金を除いて他のすべての事業分野で対前年比事業量が縮小しており、経営採算を実現するためには「人減らし」しかなく、ますます組合員とのつながりが弱まることも、見通されます。しかも、もし政策どおりに担い手への生産の集中が進めば、農協利用は、米販売で一五%、生産資材購買では一〇%の減少が見込まれると試算しています。担い手の多くが、事業面ではすでに農協から自立していることを認めざるを得ないのです。

 その他、支所統廃合で最低四人の要員を自賄いする方針や、残った支所でも信用・共済しか扱わないこと、こうして一方で数多くの遊休施設をつくりながら、同時に「減損会計」導入でそれが大きな赤字要因になっていることなども見ておかねばなりません。

 担い手重点の方向づけは経営危機に導く

 第二十四回全国大会を迎える日本の農業協同組合は、その現状をリアルに見れば見るほど、担い手重点の方向づけが、ますます組合経営の先行きを危うくすること、それに代わって、「WTOから食糧主権確立へ」の取り組みが、農協の未来開発にとっても大切なことを教えています。


 ◇訂正 9月11日付3面の「JA役員と兵庫農民連、懇談」の記事中、JA北はりまは、JAハリマの誤りでした。おわびし訂正します。

(新聞「農民」2006.10.9付)
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2006年10月

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