「農民」記事データベース20061002-750-09

この人

会社退職後、モロッコインゲンを栽培する
田村 勲さん(57)


企画、営業、調達まで手掛ける

 「八月後半の干ばつで、若干減りましたが、昨年の一・五倍の収量は確保できそうです」。声を弾ませるのは、長野県御代田町でモロッコインゲンを栽培、出荷している田村勲さん(57)。モロッコは夏から初秋が最盛期です。

 農薬・化学肥料を極力抑え、酵素を使用するなど、土作りにこだわります。野菜作りグループ、佐久楽農倶楽部のモロッコ部会の部会長です。

 二〇〇二年に、三十年勤めた自動車関連部品会社を五十三歳で退職。会社では、役員を務め、車で四十〜五十分かけて通勤していましたが、以前から、「土いじりをして、農業を楽しみたい」というあこがれを抱いていました。妻の美澄代さんにさえ、「会社を明日やめるから」と伝えたのは、やめる前日でした。

 「のんびりと、自然に溶け込んでやっています」と楽しんで取り組んでいる農業。しかし始めてから一年は、家周辺の荒れた農地の整理などで大変な毎日でした。今となっては、単年度で二〜三トンの安定した出荷を誇るモロッコも、三年目までは失敗の繰り返し。ようやく軌道に乗ってきました。

 栽培のほか、企画、営業、調達まで手がけています。「『私は作る人』で終わっていてはもったいない。苦労して作ったものを売って、上げた利益は農家にきちんと還元されるべきだ」が持論。会社勤めの経験がここで生かされています。

 「一人だけだと緊張感がない」と楽農倶楽部の仲間たちと交流しながら、モロッコ作りに励みます。「農業は、やればやっただけ評価してもらえる」と田村さん。その表情は、忙しさを吹き飛ばす充実感にあふれていました。

(新聞「農民」2006.10.2付)
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2006年10月

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