「農民」記事データベース20061002-750-07

本の紹介

田代洋一著『集落営農と農業生産法人』

協業の地域農業再編の取り組み紹介


集落営農フィーバーを「カネで釣る」農政と批判

現行対策(麦作経営安定資金)と品目横断対策の比較 政府が進める経営所得安定対策の「担い手」づくりは、集落営農が柱の一つ。品目横断対策の支払い対象をめざして、各地で行政やJA指導のもと、集落営農フィーバーが吹き荒れています。しかしこの本は、こうした時宜的なものでも集落営農のマニュアル本でもありません。筆者の田代洋一さん(横浜国立大学大学院教授)は品目横断対策について、「支払い対象を『担い手』に限定し、支払いを受けたかったら政府のいう『担い手』要件をクリアしろという『追い込み』政策は、相変わらずの『カネで釣る』農政や、それへの依存の延長でしかなく、地域農業に無理や歪(ゆが)み、主体性の喪失をもたらすもの」と批判しています。

 この本は、副題に「農の協同を紡ぐ」とあるように、全国各地で協業による地域農業再編に取り組む地域リーダーの報告書です。紹介されている集落営農や農業生産法人などは、東北から南九州まで三十三団体(地図)。協業とは、「人々が集まって共同意思のもとに協力して働くこと」という筆者。地域農業を誰が担うのか、どう支援システムを構築していくのか――。旺盛なフィールドワークのもと、農外企業の農業進出など示唆に富んだ実践例が紹介され、「農の協同を紡ぐ」という初心が浮かび上がってきます。

(筑波書房・定価3000円+税)

(新聞「農民」2006.10.2付)
ライン

2006年10月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-22249

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2006, 農民運動全国連合会