「農民」記事データベース20060828-745-09

食・農・教育一体化活動にとりくんで

栄養改善普及会会長 近藤とし子

 栄養改善普及会の近藤とし子会長(93)から寄せられた投書を紹介します。近藤さんは栄養指導の第一人者で、最近、『歩きながら考える 食べ方は生き方』(芽ばえ社、税別1714円)という本を著しました。農民連の国際シンポジウムにも参加し、食健連主催のシンポではパネリストも務めています。


 老人食にまでコンビニ弁当の手

 いつか、夏の夜道を農家の主婦さんと歩いていたとき、「昔はホタルの光で風情があったに、今は遅くまでコンビニの明かりでさァ」との嘆き節を聞かされたことがあります。聞くところによると、コンビニの数はポストの数より多く、全国の一年間の売り上げは約六兆円、その二〇%が弁当やおにぎりだとか…。

 弁当といえば、かつては高校生にでもなれば、自分で作るか母親に手伝ってもらってこしらえたいわゆる“持ち弁”が当たり前でした。しかし今は、多くはコンビニ弁当という“買い弁”に変わったそうで驚いていたところ今度は老人食にまでコンビニ弁当の手がのびる様子。しかも高齢者福祉の音頭をとるべきところからの動きのようです。

 和風幕の内弁当の食材の中身…

 そこで思い出したのが、新聞「農民」に載った、小学校の校長先生だった方が書いた「コンビニ弁当十六万キロの旅」という本の紹介記事。コンビニ弁当の影の部分、すなわち「和風幕の内弁当」の食材について詳しく調べられていました。

 十九種類の食材のうち何と十四種類が、中国、タイ、トルコ、アメリカなどから。国産は、米、サツマイモ、たくあん(ダイコン)、コンニャク、ニンジンの一部、卵だけ。心身ともに成熟期にある高校生たちは、それを知って買っているのでしょうか。さらにそれを高齢者にもという“もうけ口”を考え出す側は一体どのような人たちなのかと、腹立たしくなりました。

 こんなことで、国会で食育基本法を通した先生方は責任を負えるのでしょうか。農水省は、外食にも「食品表示」をつけるとおっしゃいますが、視力の弱くなったお年寄りにあの細かい字が読めるでしょうか。

 また、「食・農・教育一本化活動」をやっている私自身もひどく反省させられます。これでは農村の人たちがいくら逆立ちしても食料自給率四〇%は動かないはずだと考えないわけにはいきません。

 食べる人に作った人がわかれば

 東京・青山の若者の街に作家の落合恵子さんのオーガニック市場や食堂があります。絵本売り場には美しい段々畑で働く農民の姿もありますし、食品売り場には低温殺菌のおいしい牛乳や山地酪農家の作ったチーズや乳製品も並んでいます。食堂の入り口にはメニューとともに「今日の入荷状況」が紹介されており、食べる人に作った人のイメージを与え、感謝の気持ちでいただけます。“おかわり自由、食べ残し厳禁”なので、通っているうちに自分の食べる量がわかるようになると、サラリーマンも言っています。

 私は十年ほど前、岩手県東和町の「つたの輪」という、農家の若い主婦たちが自分たちで育てた安全な野菜を持ち寄り、料理を作って食べさせる食堂に案内されたことがあります。外国から嫁いで来られたお嫁さんが作る日もあり、母親が来れず、娘さんたちだけで作る日もあり、ここが若者たちの昔の“寄り合い場所”になっているなと思いました。今はこのような場所がたくさんできていることでしょう。都市のグループとの交流がもっと盛んになればいいと思います。

(新聞「農民」2006.8.28付)
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2006年8月

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