本の紹介
『とばないひこうじょう』
絵・文 森田 純
無意味な動員で青春を奪った愚かな戦争描く
『とばないひこうじょう』は、戦争末期に学徒動員された少年たちを描いた絵本です。作者の森田純さん(故人)は旧制一関中学三年の時、岩手の焼石岳のふもとにある小山飛行場の建設に駆り出されました。しかし、その飛行場から飛行機が飛び立つことなく、戦争は終わりました。
森田さんと同級生だった作家の三好京三さんは本の中で、「無意味な動員で数え年十五歳のおれたちの生活、青春を奪い去った戦争ほど愚かしくむなしいものはない」という森田さんの言葉を紹介しています。
この絵本を新聞「農民」編集部に紹介したのは、農民連食品分析センターに勤務する泉潤さんです。泉さんの父親・勝夫さんは、森田さんと深い親交がありました。
「教材映画の製作や木版画を描くかたわらで、子どもたちに民話を語り聞かせるなど、温厚な方で、子どもたちからもたいへん好かれていました」と、故人をしのびます。
そんな人柄を反映して絵本に登場する少年はみんな生き生きとしています。「現実は違っていたと思います。森田さん自身『十五歳で一度死んだ』と話していましたから。そのつらい体験を浄化して、平和を求めたんです」と泉さん。あどけない少年の顔は、“二度と失ってはならないもの”として描かれたのでしょう。
森田さんの妻の珪子さん、泉さんらは今年二月、その遺志を引き継いで、「前沢九条の会」を発足させました。(北土舎・1500円)
(新聞「農民」2006.8.14付)
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