「農民」記事データベース20060814-744-13

ポジティブリスト制への取り組み

紀ノ川農協(和歌山)

 食品に残留する農薬を規制する新しい制度、ポジティブリスト制がスタートして二カ月経ちました。同制度は、これまで基準がなかった農薬にも一律基準(〇・〇一ppm)を設定し、これを超えて農薬が残留した食品は流通を禁止します。農家にとって最も気がかりなことは、他の農作物に使用した農薬が誤ってかかってしまうことです。

 和歌山の紀ノ川農協は同制度の施行前に、梅のほ場をすべて回り、隣接ほ場から農薬が飛散する可能性を検証。地域の他の農協や行政とも協力して農家同士の話し合いを進め、安全・安心な農作物を生産する産地づくりをめざしています。宇田篤弘組合長に同農協のとりくみを聞きました。


梅のほ場すべて回り現場検証
安全・安心な産地づくりへ

 分析センターでサンプルを検査

 和歌山の紀ノ川沿いの地域は、かんきつ、桃、柿、梅などの果樹をはじめ、トマトや玉ねぎなどの野菜、水稲などが生産され、隣り合った小さなほ場で別々の作物を作っていることは珍しくありません。

 このような地域で新制度に対応するため、四月下旬に理事や果樹部会長、職員で、六十二人の農家が栽培する百十四カ所の梅のほ場をすべて回り、隣接ほ場との高低差などを目視で確認するとともに、農薬の飛散の可能性や隣接農家との話し合いの可否、区分出荷が可能かどうかなどを聞き取りました。結果は、約六割のほ場が隣接農家との話し合いが可能でした。

 また、これにもとづいて十カ所のサンプルを農民連食品分析センターで検査したところ、すべてシロでした。

 この現地確認で重視したのは、統一した基準にもとづく評価を行うということと農家に同じ問題意識を持ってもらうということです。農薬の飛散は起こりうることを前提にできることはきっちりやるということ、そして農家同士が農薬をかけるかけないでいがみ合うのではなく、問題を整理して対応するということをはっきりさせて行いました。

 新制度に対する漠然とした不安

 紀ノ川農協は、一月にポジティブリスト制度についての「お知らせ」を全農家に配り、四月にはもう少し掘り下げた資料を作って、部会や班会ごとに周知徹底を図ってきました。また、地域の総合農協の、紀の里農協と話し合い、五月中旬には県主催で学習会を開催。こうしたことを通じて、新制度に対する漠然とした不安から、安全・安心な農作物を作る地域にしようというまとまりができてきたと思います。

 大事なことは、問題を整理して対策を立て、検証してより安全なものづくりへと向上させていくことです。確かに農薬の使用量は少ないにこしたことありませんが、農作物の生産には不可欠という側面もあります。地域の共同を広げ、消費者の理解も得ながら、安全・安心なものづくりと環境にやさしい持続的な農業をめざして、さらにとりくんでいきたいと思います。

(新聞「農民」2006.8.14付)
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2006年8月

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