アジア4ヵ国 アイガモ農法の技術を交流
韓国・シンポに参加して
東京 砂金(いさご) 智美さん
関連/下郷農協と葛篭棚田など視察
韓国の農民の取り組みに感心
WTO下で苦しむ姿どの国でも
「第五回アジア合鴨シンポジウム」が七月十一日、韓国西部の忠南洪城郡洪東で開かれ、地元韓国のほか、日本、中国、ベトナム、フィリピンの四カ国から約六百人が集まりました。シンポでは、アイガモ農法の技術交流のほか、現地の水田視察、韓国農家との交流などが取り組まれました。このシンポに参加した砂金智美さん(東京)に話を聞きました。
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シンポジウムが開かれた洪東という村は、ソウルから車で五時間ほどの静かな農村です。ここでは村をあげて農薬と肥料をいっさい使わないアイガモ農法に取り組んでいます。“韓国の有機農業のメッカ”だそうですが、地元にある全寮制の農業高校では七十八人の生徒が有機農業を学び、また年間約二万人の訪問者があり、環境にやさしい農業教育などを行っているそうです。若い人を育てていこうというこうした努力に感心しました。村でいただいたパンやヨーグルトなどもおいしかったです。
日本からは、「全国合鴨水稲会」の萬田(まんだ)正治さんや古野隆雄さんをはじめ、アイガモ農法の実践家や農民作家の山下惣一さん、西日本新聞の記者など二十六人が参加。シンポジウムでは、古野さんがアイガモ農法と乾田直まき栽培の取り組みについて、また中国からアイガモ農法と生物農薬の活用について報告がありましたが、米作りでは日本が優れた技術を持っていることをあらためて知ることができました。しかし日本の中で、そうした技術がまだまだ普及していないことを残念に思います。
韓国の人たちとの交流は、言葉の壁があって十分できませんでしたが、韓国にもアイガモを使って農薬や化学肥料に頼らない農業に取り組んでいる人たちが、こんなにいることを知ってうれしく思いました。また、WTOのもとで、農業にもグローバル化と新自由主義がおそいかかり、日本だけでなく、アジアの農民が苦しんでいることがわかりました。
私の父(「金澤米店」店主の砂金健一さん)は、米袋に「身土不二」と書いて販売していますが、韓国の米袋にも「身土不二」と書いてありました。「身土不二」とは、「人の命と健康は食べ物で支えられ、食べ物は土が育てる。ゆえに人の命と健康はその土と共にある」という意味です。ここからも韓国の人たちの農業に対する深い思いを知ることができました。
福岡・農民連青年部学習交流会
農民連青年部「夏の学習交流会」が行われた七月十四日後のオプションツアーで、大分県の下郷農協と福岡県の葛篭(つづら)棚田などを視察しました。
下郷農協では、畜産農家や新規就農した農家を訪問して懇談。二十八年間平飼い養鶏をしている高川健世さんは、ヒナの時にもみ殻を与えるなどして消化器官を鍛え、栄養の吸収を良くすることで、成鶏に生草を与えても、産卵率が落ちない元気な鶏になるといいます。
また、新規就農して十六年になるという鈴木健久さんは、NPO団体「耶馬溪ノーソンくらぶ」を立ち上げ、農産物の集荷・販売などに取り組み、喜ばれていることなどを話してくれました。
七ヘクタールの面積に三百枚ほどある葛篭棚田は、農水省の「日本の棚田百選」にも選定されています。水面が隠れる程度まで成長した稲が風にゆれ、山あいの斜面に精巧に積まれた石垣とのコントラストが農山村の景観をかもし出していました。その美しさとともに、急しゅんな棚田がきれいに管理され、米を生産していることに感心しました。
(新聞「農民」2006.8.14付)
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