「農民」記事データベース20060814-744-05

品目横断対策、集落営農による
農家、農村の変化と対応〈上〉

日販連研究会での報告 堂前 貢

 日本販売農業協同組合連合会(日販連)が開いた「農協の明日を切り拓く研究会」(七月十五日)で、農民連の堂前貢副会長が「品目横断対策、集落営農による農家、農村の変化と対応」について報告しました。その大要を紹介します。


○岩手県の場合○

 岩手県は、全国的にも集落営農づくりが進んでいると言われています。しかし、二〇〇五年度末の到達点を見ると、集落ビジョンが策定されたところは千五百八十九、このうち推進体制が整備されて動き出しているところは百五十三、わずか九・六%です。その内訳をみると、特定農業団体が六十五、特定農業法人が三十五、認定農業者が三十三、品目横断対策の要件をクリアしているところはわずか二十で、要件のクリアは全体の一・三%にすぎません。

 私が現地調査したいくつかの営農集落の状況を報告します。まず、全国最大級の紫波町M営農組合です。ここは、十三集落の三百十戸が参加し、面積は五百十五ヘクタールで今年四月に営農組織を立ち上げました。

 立ち上げた理由は、これまで七つの転作受託組合で小麦・牧草・花き・米のブロックローテーションをしてきたが、これでは耕作放棄などに対応できなくなったからだそうです。つまり、地域の農業、農村を守ることが出発点です。結果として品目横断対策の交付対象になれば、ということでした。

○法人化への不安○

 品目横断対策の要件になっている、主たる従事者の所得目標について尋ねると、「地域に格差をつくるものだ」「隣の稼ぎのために誰が働きますか」という返事です。また法人化についても、近くにある生産組合が最近倒産したこともあって、農家の中には「法人化すれば、土地をとられる」との不安があり、「いまは受け入れられないのではないか」と話していました。

 ですから、品目横断対策の対象となるための要件のうち、五年以内の法人化や主たる従事者の所得目標については、いまだ計画が不透明ということでした。

○「乗る人」は皆無○

 次は、花巻市にあるM農業生産組合です。花巻市は、県の集団営農モデル地区で、行政、JAが中心となって対策室を設置し、活発に活動しています。この生産組合は、面積が百ヘクタール、六十戸で組織し、このうち農業に従事しているのは四十戸で、麦・大豆の転作受託組合が中心です。

 品目横断対策のアンケートで、「この対策に乗る」と応えた人は、皆無だったそうです。そして、数人が集落営農からの離脱を表明し、なかには減反にも加わらない農家も出ています。対策室は、「集落営農のハードルが高すぎる。認定農業者中心の品目横断対策で」という姿勢になっています。

(つづく)

(新聞「農民」2006.8.14付)
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2006年8月

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