「農民」記事データベース20060807-743-09

憲法守り子どもたちの手に

日本母親大会長野 伝えよう食と農の大切さを

消費者に励まされ農家の女性も元気に発言

関連/新しい歴史切り開きよりよい祖国を子らに

 「伝えよう! 憲法と平和、食と農の大切さを」――第五十二回日本母親大会が七月二十二〜二十三日、長野市で開かれました。今年の最大のテーマは、改憲勢力の企てを許さず、「憲法を守り、戦争のない世界を子どもたちに手渡す」ことです。全体会では、「九条の会」呼びかけ人の一人で、作家の澤地久枝さんが「地球の母であること」と題して講演し、満場の拍手とともに、のべ一万五千人の参加者の思いが一つに。また、前日に行われた分科会の一つ、シンポジウム「食の安全・安心と日本農業を守ろう」も、二百六十人の参加で、全体会に負けず劣らず熱く盛り上がりました。


〈シンポジウム〉
地産地消は女性の特技
食糧主権を確立しよう
夢とロマンあふれる産直

 シンポジウムのパネリストは、地元の果樹農家の山下富江さんと新婦人の高田公子会長、そして農民連の笹渡義夫事務局長です。山下さんは、二十年前に比べて半値以下になった農産物価格の暴落による農家の苦悩とともに、これに負けまいと広げている産直、直売所の取り組みを紹介。「地産地消は女性の特技。農業のもう一つの流れをつくりたい」と語りました。

 笹渡さんは、食料自給率の向上が焦眉の課題であるにもかかわらず、自らの利益のために農産物の自由化と農業「構造改革」のシナリオを描く財界を告発し、「国民が手をつないで新しい流通をつくることが食糧主権の確立に向けた一歩になる」と指摘。高田さんは、子どもや若者の食生活の乱れが社会問題になる中で農業に触れ、改めて食の大切さを実感する子どもや若い母親の姿を紹介しながら、「新婦人の産直運動は、夢とロマンあふれる活動だ」と述べました。

 涙あり笑いあり身振り手振りも

 三氏の報告に続く討論は涙あり、笑いあり。時には身振り手振りを交えて、農業と食を守りたいとの思いを語ります。

 東京・三鷹市の高橋友子さんは、引きこもりの孫を社会復帰させたいと小さな弁当屋を始めました。そこで見えてきたものは、輸入食材の粗悪さと家庭の食生活の乱れ。国産でおいしくを心がける高橋さんは「たまには弁当もいいけど、おいしい手作り料理を子どもたちのために」と、ついしゃべってしまう、自称“おせっかいおばさん”です。

 同じく東京の鶴美千代さんは、小平市の「農のあるまちづくり推進会議」の委員を務めます。「世界のことがわかるのは、農民連や新婦人の新聞だけだ」と鶴さん。「WTOの悪だくみを粉砕してほしい」と力を込めました。

 こうした声に励まされ各地の農民連の女性たちも元気に発言。愛媛の宇都宮孝子さんは、自然災害や価格低迷に負けずに続けてきたミカン産直や最近始めた野菜づくりにかける思いを披露。群馬の木村君江さんは、農家に嫁いだ身の上とともに「家を変え、保守の地盤といわれる農村を変えていきたい」と語りました。

 最後に山下さんは「隣のおばちゃんと話している感じで、農家も消費者も自分をさらけ出し、本音で語り合い、元気が出た」と語っていました。


新しい歴史切り開きよりよい祖国を子らに

「地球の母であること」 澤地久枝さんが記念講演

 澤地さんは、一九五五年の第一回母親大会と、その後の運動をこう振り返りました。「最初の母親大会は、戦争の苦しみを血を吐くように訴えた涙の大会でした。その後、自らの体験だけが裏づけだった母親たちは、自分たちが加害者だったこと、夫や息子を戦争に送り出した無知を、反省として学んでいったのです」

 「しかし…」と澤地さんは、「この国は、戦争の体験を文化的に語り継ぐことが不十分でした」と。そして、作家の大岡昇平さんの「敵は、自ら背負っている祖国の歴史だった」という言葉を紹介しながら、「新しい歴史を切り開いていかなければなりません。厳しいけど、乗り越えなければ、よりよい祖国を子どもたちに残せません」と訴えました。

(新聞「農民」2006.8.7付)
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2006年8月

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