「農民」記事データベース20060807-743-08

経営所得安定対策の実施
要綱・予算要求額決まる

目立つ生産調整のしばり、
対象農家のしぼり込み明白


 農水省は七月二十一日、経営所得安定対策の実施要綱と予算要求額を決めました。特徴は、生産調整のしばりがやたらと目立つこと。対象農家をしぼり込む意図は明白で四千億円超の予算が空手形になる可能性大です。

*自給率向上に背

 品目横断的経営安定対策の千八百八十億円は、現行の品目別対策(麦作経営安定資金や大豆交付金、担い手経営安定対策など)の財源を組み換えただけ。中川農相が法案審議の最終盤で「この対策は、実効性に未知の部分もあることから、必要な見直しを検討する」と異例の発言をし、盛り込まれた「過去の生産実績がない案件等についての対応」(七十億円)にしても、「生産調整の強化」が条件になっています。

 農水省の担当者は、「要件を満たしていれば、そん色ない支援を受けられる」と言いますが、農民連が「規模要件を満たし減反もきっちりやっている農家がこれまでの水張り減反をやめて麦や大豆を作ったら、対象になるのか」とただしたところ、担当者は「生産調整の強化に当たらないから」とこれを否定。自給率向上に背を向ける姿勢が浮き彫りになりました。

 米政策改革推進対策では、本体の産地づくり交付金を減額して、「意欲的な生産調整の推進」を目的にした新需給調整システム定着交付金(旧特別調整加算)を増額します。また、品目横断対策に加われない農家を対象にした「ポスト稲得」(稲作構造改革交付金)は二百九十億円から翌年は二百七十億円、二年後は二百二十億円へと、年を追うごとに減額。しかも約二割は「生産調整参加者の拡大に配慮して」都道府県に配分します。産地づくり交付金は、二〇一〇年以降は「米作りのあるべき姿」になるとして三年間で打ち切ります。

*ハシゴ外された

 さらに農水省は、農地・水・環境保全向上対策の要件に生産調整目標の達成を突如、盛り込みました。生産調整を前提にせずに取り組んできたある県の農政課幹部は「ハシゴを外された」と戸惑いの声をあげています。そもそも同対策は、泥上げや畦の草刈りなど、地域住民との共同活動を支援するもの。農家以外の住民には減反は関係ありません。「品目横断的対策」に乗る条件のない地域の「乗れるのは環境対策だけ」というわずかな希望を踏みにじるもので混乱は避けられません。

 中川農水大臣の「見直し」発言は、結局、法案を通すためのものでしかなく、「要項の見直し」は多数の農民を農政の対象から排除する本質をますます露骨にしたものです。

(新聞「農民」2006.8.7付)
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2006年8月

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