自給率の数値目標かかげるな農水省の企画部会 有識者ヒアリング出席4人のうち2人 財界の声を代弁
「食料・農業・農村基本計画」の見直しを検討している農水省の審議会企画部会。その検討方向は、財界の要求にもとづいて農産物の自由化を進め、価格保障を完全に廃止して企業農業や大規模農家に「直接支払い」を実施し、株式会社の参入規制を撤廃して農地を大企業に解放することです。六月二十八日のヒアリングは、これを推し進める“露払い”というべきもの。財界の声を代弁する人物を四人中二人も出席させる醜悪さが目立ちました。 出席者は、日本生協連の山下俊史副会長(コープとうきょう理事長)、サカモトキッチンスタジオを主宰する坂本廣子氏、片山りんご有限会社の片山寿伸代表取締役、経済同友会の福川伸次氏((株)電通顧問)の四氏。
農業が交渉障害と子どもの食農教育の必要性を訴えた坂本氏、リンゴ農家の片山氏はまったく別ですが、福川氏は、今年三月に「農業の将来を切り拓く構造改革の加速」と題する提言を出した経済同友会農業政策委員会の委員長を務めた人物。同提言は「WTO交渉や…FTA交渉においても、農業問題が障害になり交渉の主導権を握れず…国益を失い、国際社会から孤立しかねない」などと、財界の立場から農業を攻撃しています。福川氏はこれを紹介しながら、「現段階で食料自給率の数値目標を掲げるべきではない」「株式会社の参入も解禁する必要がある」「WTOやFTAを農業の競争力強化の手段としてとらえるべき」などと要求しました。さらに、意外なことに日本生協連副会長の山下氏も、経済同友会の提言づくりに副委員長として関わった中心人物です。「高関税による国境措置を段階的に縮小して、農産物の内外価格差の解消を早急に図る必要がある」「直接支払いの対象は、生産性の向上と規模拡大に寄与する生産者に限定すべき」「特区制度による農業への参入規制の緩和を」などと、提言にそって財界の要求を代弁しました。
経済優先がゆがみこれに対して企画部会の委員からは、「経済優先できたことが国のゆがみを生み出している。真剣に農業を守ろうと思っているのか」といった厳しい意見が出される一方、「納得することが非常に多かった。私もこの部会で自給率目標は掲げるべきではないと再三言ってきた」(荒井伸也・オール日本スーパーマーケット協会会長)などと援軍を喜ぶ声も。生源寺眞一座長も「いただいた意見を参考にさせてもらう」と述べました。
8月上旬に中間論点整理企画部会は七月下旬から八月上旬にかけて、生源寺座長の案をもとに中間論点整理に向けた議論を集中的に行い、八月十日の審議会に報告する予定。「農業を財界の犠牲にするな」「国内産の増産で自給率の向上を」の世論を大いに盛り上げていく必要があります。
(新聞「農民」2004.7.19付)
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[2004年7月]
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