「農民」記事データベース20040126-620-08

「きくまの民話と伝説」

愛媛県菊間町


けっこうさん(港町)

 おへんどさんが菊間に流れて来て住みつきました。いっつも裸で腰に布をまきつけとりました。時々船方にやとわれて食物や酒をよばれては、

 「けっこうでございます、けっこうでございます。」と手を合わせておじぎをしよりました。

 仕事のない折には物持ちの家を回って、

 「けっこうでございます。」と、手を合わせては口すぎをしよりましたが、ある正月の朝のこと、いつものように門に立って「けっこうでございます。」とゆうたところ、「えんぎでもない。」と、そこらにあった棒切れでたゝかれてころりと死んでしまいました。

 とるにたらんほいとへんどのこと、えゝかげんな事で済ましとりましたら、その物持ちの一族に悪い事がなんぼでも続きますので、おがんでもろたら、

 「けっこうさんが憑(と)りついとる。」いいましたので大きな榎の木の下にほこらをたてゝまつり、盆には盆おどりをしてなぐさめてあげとります。

(「きくまの民話と伝説」より)
(四国ブロック編集協力員 大道法幸=愛媛・菊間農民組合、写真は大道さんの撮影)

(新聞「農民」2004.1.26付)
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2004年1月

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