「農民」記事データベース20030224-575-06

21世紀への挑戦

誰でもできる無農薬・有機稲作(11)

稲葉 光國


病害虫発生防止と食味・栄養価

 無農薬栽培は、病害虫が発生しても化学合成農薬を散布しないというのではなく、病害虫発生のメカニズムを知って、健康なイネづくりで発生を未然に防ぐ農法です。稲作で問題になる病害虫には(表1)のようなものがあります。

 
表1 イネの主な病害虫とその発生防止対策
時期
病害虫名
対  策
育苗期 種子伝染性病害虫(バカ苗病・イモチ病・モミ枯れ細菌病・立枯れ病・褐条病・イネシンガレセンチュウ病) 1,17以上の比重選又は温湯消毒法、(乾燥もみを60℃のお湯に7〜15分漬け、冷水で急冷する)で防除する。
ニカメイチュウ 苗にネットを張り、産卵を防止する。
本田初期 イネミズゾウムシ 4、5葉令以上の健苗を移植する。
イネドロオイムシ 未熟堆肥や元肥の過剰施肥を中止する。
本田中期 イモチ病 密植・未熟堆肥の過剰投入による窒素過剰・根腐れ等を防止する。
モンガレ病 密植と強い虫干しを行なわない。
中後期 カメムシ 出穂期を8月15日以降にする。出穂期に窒素過剰のイネにしない。
ウンカ・ヨコバイ・イネツトムシ 窒素過剰のイネとしない。

 病害虫の発生は、そのほとんどが過剰な窒素がアミド(主にアスパラギン)という形で茎葉に蓄積することによって発症します。特に、密植をすると本田中期から光合成効率が低下し、天候の悪化が引き金になって発症するケースが多くなります。また、過剰な窒素追肥や根腐れによってリン酸吸収が衰えると発症します。

 化学肥料を少し多めに追肥すると贅沢吸収が起きて病害虫の発生が増えますが、土着微生物を多く含んだ良質の発酵肥料を投入した場合はアミノ酸吸収が多くなり、アミドの蓄積が少なくなって病害虫の発生を防止するとともに食味の向上にもなります。

 有機米を市販の食味計で測定すると食味値があまり高く出ない場合があります。これは、玄米に含まれる窒素化合物すべてをタンパク質と見なして数値を算出するためです。食味低下の原因であるアミドの少ないお米であれば、タンパク質の総量が多くてもおいしいお米です。

 お米のタンパク質は蕎麦に次いで必須アミノ酸価(栄養価)が高くなっています。特に有機栽培米ではMg/K比が高まり、亜鉛などミネラル成分が多く含まれる(表2)など、栄養価の向上が見られます。

表2 慣行栽培米と無農薬・有機栽培米の成分比較
(ひとめぼれ、あきたこまち、コシヒカリ21点の平均値)
成  分
慣行栽培米
無農薬・有機栽培米
タンパク質含量
5.97%
6.30%
Mg/K比
0.55
0.61
亜鉛含量
18.61ppm
19.65ppm

(NPO法人民間稲作研究所 代表)

(新聞「農民」2003.2.24付)
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2003年2月

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