「農民」記事データベース20030224-575-05

農・労・商・市民シンポジウム開く

国民の共同の力集めて生活破壊の政治変えよう

農民連の真嶋氏ら深刻なくらしの実態報告


 国民各層の実態を知り合い、要求の統一点を探ってナショナル・ミニマムと国民共同を考えていこう――と、農民、商工業者、労働者、市民が集まって、二月七日、東京・文京区の全労連会館でシンポジウムが開かれました。国民生活破壊の政策転換を求めていく流れを形づくっていこうというのがねらい。主催した同実行委員会の予想を大きく超える百四十人が参加、感動的な集いとなりました。

 現状続けば大規模農家も崩壊

 パネリストは農民運動全国連合会の真嶋良孝副会長、東京商工団体連合会の西村冨佐多会長、日本年金者組合の小島宏委員長、東京春闘共闘会議の伊藤潤一事務局長の四氏。国学院大学経済学部教授の小越洋之助氏が進行・コーディネーターをつとめました。

 小越教授は、このシンポが歴史的にも画期的なものだと指摘。「日本社会は生きる権利がシステムとしてきちんと保障されていない社会だ。国民の生活が破滅させられようとしているいま、各分野でお互いに似たような問題として出てきている状況を具体的に知ってほしい」と促しました。

 討論の口火を切った真嶋氏は、ピーク時に比べて平均して生産者米価が三〇%から三五%下がっていることを紹介。「例えば一千万円の売り上げがあった農家は、六百万円の資材費を除いて四百万円の所得があった。米価が三〇%下がれば売り上げは七百万円になる。資材費は六百万円のまま下がらないので、農家の手元には百万円しか残らない」ことを明らかにしました。

 稲作農家の日給は二〇〇〇年は三千八百二円。一九七〇年は従業員五人以上の製造業の平均賃金と肩を並べていました。それが八〇年代に入ると三分の一に、いまは五分の一へと差がつくばかり。「今の状態が二、三年続けば、なんとかもちこたえている北海道の大規模農家も破綻してしまう。世界中で日本だけがやめてしまった価格保障を、きちんとやらせていきたい」と真嶋氏。

 町から魚屋・肉屋が消えた!

 西村氏は、「私の町の一番大きな商店街で三百店舗あるが、大型スーパーの影響でついに魚屋や肉屋がゼロになった。代わって出てきたのはコンビニとチェーンストアの飲食店です。町場に根づいた小売業が非常に少なくなっているのが最近の状況です」と、東京の卸・小売業者の実態を報告。「地域金融機関も激減し、地域経済はガタガタだ」と訴えました。

 そんななかで、経営向上と街おこしに力をいれ、商工交流会を重ねてきたことを紹介。「この交流会は地域との共同を求めるうえでも非常に大事な相談会になっている」と結びました。

 低年金、低賃金改善要求は切実

 小島氏は、国民年金加入対象者の四割が低年金者か無年金者だと指摘。そのほか二千六百万人を超える失業者、非正規雇用労働者の存在をあげ、「こういう人たちが無年金者とか低年金者になる可能性がある」と指摘しました。また、「国民年金は四十年の満期でも月六万七千円、平均支給額は五万一千円です。これで生活できますか」と訴え、世界のすう勢となっている最低保障年金制度の創設の必要性を強調しました。

 伊藤氏は、労働組合の雇用・賃金闘争・時間短縮闘争について報告。とくに大量にいる非正規労働者の場合、「均等待遇・誰でも時給千円以上」、「全国一律最低賃金の確立」、「課税最低限の引き上げ」が切実な要求となっていることをあげ、「正規・非正規を問わず、一緒になってたたかっていくことが大事だ」と述べました。

 パネリストの報告を受けて、会場の参加者も積極的に発言しました。

 一致する要求で共同強化を

 東京公務公共一般労組の阿久津光書記次長は、「たとえ正規でなくても安心して生活できる賃金水準、労働条件を構築していくことが大切ではないか」と述べ、生協労連パート部会の八谷真智子事務局長は「均等待遇、雇用の安定、生活できる賃金を本気になって労働運動のなかで取り組まない限り、労働者の雇用破壊、賃金破壊の歯止めはかからないのではないか」と訴えました。

 最後にパネリストが再び発言。真嶋氏は「労働者の最低賃金制は、農産物の価格保障の基礎になる。それに輸入農産物への依存の打破は、労働者なり業者なり国民が消費力・購買力を持たなければ不可能だ」と述べ、西村氏は「安全な街、住み続けられる街という観点で、共同を進めていきたい」と決意を述べました。

 小島氏は、「年金を減らしたら町や村は困る、商店もそうです。手を結んで政治を変えましょう」と呼びかけ、伊藤氏は「町を歩けば共同の課題にぶち当たるといわれます。労働組合も日常的に地域のことを考えてやっていきたい」と述べました。

(新聞「農民」2003.2.24付)
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2003年2月

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