「特定農薬」で農水省に要請農民連・産直協“適正な対策とれ”
昨年十二月に農薬取締法が改定され、三月十日から実施されます。その内容は、「農薬」及び「特定農薬」の使用にあたって、違反した生産者への罰則が強化される一方、「特定農薬」の中身や、基準のない作物の対応など、不明確なことが多く、産地でも消費者の間でも不安と混乱が起きています。また登録が抹消された農薬についての行政やメーカーの責任もあいまいなままです。 そのため農民連・産直協は二月四日、農水省に七項目の要請を行いました。要請には青森、福島、茨城、千葉、埼玉、神奈川の代表と、斎藤敏之産直協事務局長、石黒昌孝農民連事務局次長が出席しました。 要請では、政府の責任で無登録農薬が輸入・流通されることがないよう体制を確立すること、登録失効農薬に関する情報を農家に分かりやすく伝えることを訴えました。
国とメーカーの責任で回収せよ登録が抹消された農薬の取り扱いと回収義務について、農水省は、安全性には問題がないが登録が失効した農薬については「使用期限内であれば使用してよい」と回答しました。 また安全性に問題があるために製造・販売・使用が禁止になった農薬については「禁止された後に農家に販売した場合は、メーカーが回収しなければならない」としましたが、農家に販売した後に失効農薬となった農薬については「メーカーに回収させることは難しい」と回答。これに対して農民連・産直協の代表は、処理責任を農家に押しつけず、国とメーカーの責任で回収することを強く要求しました。
矛盾する防除資材規制の分類また「特定農薬」について、さまざまな報道があり、農家や消費者の中で混乱が起きていることに対して、農水省は「マルチやネットなど物理的な手段で防除するものや、天敵ではない生き物(雑食性のアイガモなど)は農薬ではなく、規制はしない」と回答。 また、米ぬか、木酢液、牛乳など、植物・動物・食品由来の資材は防除効果の科学的な証明が不可能だとして、データが確認されるまでは当面「特定農薬」としての分類を保留するとしました。その間のこれらの資材の規制について「薬効をうたって販売された場合は農薬取締法を適用する。農家が自主判断で使う場合は規制しない」と述べました。 しかしこれらの防除資材は、化学合成農薬の使用を減らすために農家が編み出した農業技術です。これらの資材まで取り締まりの対象にするというのは不当であり、政府が進める有機認証制度にも矛盾します。
生産者への責任転嫁は許されないまたこれらの資材を「特定農薬」と呼ぶことそのものが問題ではないかとの追及に対して、農水省の担当者は「ネーミングは失敗だった」と回答。「特定農薬」の名称をあらため、天然由来の資材を「農薬」と呼ぶのをやめさせる運動が今後いっそう求められます。 また全国的に生産量が少量である地域特産物などの「マイナー作物」は適用される農薬が少ないか、まったくないため、法改定の実施後は、防除する手段がなくなり、安定的に生産することができなくなってしまいます。 農水省はこれらの「マイナー作物」について、類似の作物にグループ化するなどして登録農薬を拡大する形で当面の間、経過措置を取るとしました。しかし、国が安全性のチェックをしないまま使用を拡大し、何か問題が起これば生産者の責任にするなど、大きな問題点があります。
安全性確認で予算の増額をまた適用農薬の拡大には、生産者からの要請を都道府県が集約し、農水大臣の承認を受けなければならないとなっています。そして、この経過措置の期間に品目毎の農薬登録を促進するために必要な試験データの作成はメーカーと都道府県に要請するとしています。しかし農水省は、これに伴う自治体への予算の増額は考えていないと回答しました。これに対し、「マイナー作物」への農薬使用は、国の責任で安全性を確認したうえで拡大するようにと要請しました。またグループ化からはずれた作物も多くあり、早急に県に相談し、栽培が続けられるよう運動を強める必要があります。 (産直協 笠原尚)
(新聞「農民」2003.2.24付)
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[2003年2月]
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