世界の大勢にそむく小泉「米改革」
「米政策改革大綱」の具体化が急ピッチで進んでいますが、政府の念頭にあるのは「米が余ったら困る」ということだけ。いわば“米過剰恐怖症候群”です。したがって、米価を一俵(六十キロ)三千円にする、転作奨励金を大幅にカットする、本格的な流通自由化によって米の買いたたきを野放しにする――などなど、徹底的な米つぶしの政策が検討されています。 “足りなくなったら輸入すればいい”――これが政府の思惑ですが、そう簡単にはいかないことが、FAO(世界食糧農業機構)の警告などで明らかになりました。
世界人口の半分以上が米に依存FAOは昨年七月にタイで開いた第二十回国際米委員会に対する報告(食糧安全保障における米の役割)のなかで、次の点を指摘しています。 (1)米は世界で最も重要な主食作物であり、世界の人口の半分以上が米に依存している。 (2)米の五分の四以上は低所得の発展途上国の小農によって生産され、消費されている。現在、八億一千五百万人が飢餓と栄養失調に苦しんでいるが、かれらのほとんどは米生産・消費地帯に住んでいる。 (3)世界の米生産の伸びは年率〇・九%に鈍化しており(八〇年代は二・三%)、二〇一〇年の世界の米生産量は四億三千九百五十万トンと予測される。一方、二〇一五年の世界の米需要は四億七千二百万トン、二〇三〇年には五億三千三百万トンと予測される。将来の米需要を満たすためには多量の米が必要である。
「米を粗末にする」小泉政治生産と需要の予測は年次の違いがあり、単純な比較はできません。しかし(1)カロリーとタン白質の半分前後を米に依存している国々がアジアには多いこと、(2)アジアの国々の多くは年間一人当たり消費量が百〜二百四十キロであること、(3)アフリカや中南米でも米依存がかなり高いこと、(4)これらの地域では人口が今後も大幅に増加すること――などを考えれば、FAOの警告はきわめて重いといわなければなりません。 この一点からしても、「米を粗末にする政治」で、世界でもトップクラスの米生産力をもつ日本を、「米を作らない国」にしてもいっこうにかまわないという小泉政治は、世界の大勢にそむくものといわなければなりません。 (新聞「農民」2003.2.24付)
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[2003年2月]
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