土を生かして安定生産「農の会」が定例研究会「土を活かして安定生産」をメインテーマに一月二十五日から二日間、「農の会」定例研究会が東京都内で開かれました。安全・安心への関心が高まり、多くの国民が国産農産物を望むなか、それに真正面からこたえ、生き物のしくみや自然の働きを活かした農業技術を組み立てようというもの。研究会ではこうした趣旨の記念講演や実践・研究報告が行われました。
記念講演「連作・輪作・混作と土壌微生物」「連作・輪作・混作と土壌微生物」をテーマに記念講演を行った自然農法大学校校長の木嶋利男氏(農学博士)は次のように報告しました。 「連作を続けると病原菌が増え、病害が多くなると考えられているが、水稲、コムギ、サツマイモ、三浦半島のダイコンなど、連作で増収や品質向上をもたらす例がある。 土壌微生物の視点から各種の実験を行うと、三年目くらいまでは病気が多くなるが、四年目から好転し、五年目には病害が出にくくなる発病衰退現象がはっきりしてくる。これは病原菌を好んで食べる天敵類が増え、新たなバランスができたためで、この発病抑止土壌では、例えば病原菌を接種しても発病しなくなる。 農業現場に応用するには、連作を続けながら、発病衰退が起きるまで輪作、混作や間作、対抗作物の利用によって病害を回避し、収量を安定させつつ、連作で安定した生産ができるようになることを目指すべき」 講演に引き続いて行われた関連報告では、トマトの多収穫に東京で五十年間取り組んでいる田中正直さんが「新潟の渡辺憲一さんは土壌病害を出さずに連作しているが、私の畑では土壌消毒以上に効果のある方法は見いだせなかった。多収穫では若苗栽培法に新しい方向が見えてきた」と報告。神奈川の諏訪部明さんはブドウの有機栽培でワラや剪定チップ、コンブボカシなどを土壌表面に敷き、草生栽培にすることで土着天敵が害虫を防いでくれるようになったことなどを報告しました。 各地の活動報告では、ストップ遺伝子組み換え汚染種子ネット代表の山田勝巳さんが「病虫害などで農業生産が落ち込む原因は、遺伝子ではなく農薬や化学肥料を多用して作る人間の側にある。原因を作物の遺伝子に求める誤りを改めることが必要」と問題提起。 東京農工大学名誉教授の柳下登さん(農の会会長)が「かつて学会では誰も認めなかった接ぎ木で作った雑種『ピートン』が、新種として品種登録できるまでになった」と五十年間取り組んできた研究を報告しました。 また、「食品残渣で家畜を飼う農家で見学したことなどをヒントにニワトリを飼い、環境教育に取り組みたい」(山梨・富士エコパークヴィレッジの今井雅晴さん)、「サイズが3L超、糖度が二十度もある日本一のトウモロコシ『スーパースイートきぼう』を収穫したが、値段は安く、売り方の研究も必要」(栃木県農民連の海老原恒夫さん)などの発言も。他にも多くの人が自己紹介を兼ねて発言し、会員の多彩な活動が報告されました。 (農の会 石綿薫)
(新聞「農民」2003.2.17付)
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[2003年2月]
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