21世紀への挑戦誰でもできる無農薬・有機稲作(10)稲葉 光國
倒伏・高温障害の防止と水管理稚苗の機械植えや直播による栽培では、倒伏問題の解決が重要なテーマでした。特にコシヒカリの作付の多い地域では元肥を減らしたり、植え付け本数を少なくしたりして対応してきました。最近では化学合成農薬である倒伏軽減剤を混入した肥料が市販されており、知らないまま使用していないか注意する必要があります。 倒伏は、早くから株内競合が始まってしまう密植が原因ですので、これを改めることが先決です。植え付け本数を一株三本以下に制限し、疎植にすればコシヒカリでも茎の直径が五mmを超えるようになり、倒伏しにくくなります。 写真〈写真はありません〉は昨年作付し、六月二十八日に発酵肥料を追肥したコシヒカリです。八月下旬の豪雨で、周辺の稲がほとんど倒伏したのにビクともしませんでした。表〈表はありません〉に示したように茎が太く、かつ下位節間が伸びなかった為で、この田んぼには田植え後一度も入らず、収量は九俵弱でした。 最近では、地球温暖化の影響による稲の高温障害も問題になっていますが、過去二年間は、ともに七月下旬までの異常高温が原因です。 稲は出穂前十五日頃からデンプンを稈に貯め、出穂直後から穂に転流していきます。その割合は最終収量の約三割とも言われています。 この時期に高温が続くと呼吸が増えてデンプンを消費するため(十度の気温上昇で呼吸が一・八五倍になる)、穂のデンプンが不足して乳白米(しらた)が増える高温障害が発生します。 こうした高温障害を避けるためには、連休田植えをやめて、五月下旬に移植し、出穂時期を八月十五日以降にずらすことが第一です。 第二にV字型稲作を改める必要があります。密植して早期に茎数を確保し、窒素中断をするこの栽培法では、七月上旬に幼穂形成が始まり、出穂が早まる傾向があります。 また、強い中干しによる窒素中断では、根にストレスがかかり、根の伸長のためにデンプンが余分に消費され、後から水を入れてもデンプンが貯まらなくなってしまいます。さらに、水がないために地温が上昇して呼吸を増やすことになりますから二重にマイナスです。 したがって、中干しは弱く行ない、刈り取り十日前まで掛け流しの湛水管理とすることが第三の対策です。こうした水管理はカドミウムの吸収を減らすことにも通じますから、問題になる地域ではぜひ実行してみて下さい。 (NPO法人民間稲作研究所 代表)
(新聞「農民」2003.2.17付)
|
[2003年2月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2003, 農民運動全国連合会