「農民」記事データベース20030217-574-02

輸入果汁にセーフガード発動を

農業・地域経済を守ろう

関連/分析センター募金者氏名(敬称略)


 「加工向けリンゴの値がつかない。農協の倉庫にも山と積まれている。このままでは廃棄せざるをえない」

 「加工用の価格はこれまで生食用の下支えになってきた。輸入果汁が自由化される前は一キロ四十円前後だったのに…」

 「りんごの里」として知られる長野県豊野町。千曲川を望む山腹の、まっ白い雪のじゅうたんが敷きつめられたリンゴ園で、生産者の菊地信行さん(47)が剪定の手を休めて、長野県農民連の山下始胤会長と話し合っています。

 「丹精込めて作ったものをむざむざと捨てられてたまるか!」「地域の農家とともに加工業者にも呼びかけて大きな運動にしよう」――いまリンゴやミカンなどの果実産地では、輸入果汁にセーフガードの発動を求める運動が広がっています。

 果汁の輸入で自給率急落

 リンゴ果汁の輸入が自由化されたのは九〇年、オレンジ果汁は九二年に自由化されました。以来リンゴ果汁の輸入は三・一倍の十万トン(〇一年、九二年対比)、オレンジ果汁は二・二倍の十二万三千トン(同)に急増しました。

 これを原料の果実の量に換算すると、国内のリンゴ生産量の約八割、ミカン生産量の約九割に相当します。膨大な量の輸入果汁によって、〇一年の果実の自給率は四四%、この十年間で十五ポイントも急落しました。

 全国のリンゴの五割以上を生産する青森県りんご協会の木村徳英会長は「自由化のときに国は『わが国のリンゴは品質がいいから大丈夫』と言っていた。しかし果汁は完全に輸入に押し切られ、それに対して政府は何も有効な手を打とうとしない」と憤ります。

 青森県の果汁用リンゴは十年前の一キロ四十二円から一昨年(〇一年)は十七円に下落しました。果汁用といっても、少しキズがあるとか、ちょっと色づきが悪いという程度の立派なリンゴです。それが今年は一キロ五円、一玉一円に満たない価格でも買い手がつかない状況に立ち至っています。

 輸入に積極的な大手飲料

 長野県農民連の山下会長は二月四日、地元にある果汁工場を訪ねました。「輸入果汁にセーフガードの発動を求める」署名と請願に協力を要請するためです。応対した役員は「国内の農業、農家を守らなければ、私たちの営業も成り立たない」と応じました。

 この工場は、年間約八千トンのリンゴを処理し、搾った果汁の八割をメーカーに卸す、県内では中堅の工場。しかしその役員は、「自社で製品にする割合を現在の一五%からもっと引き上げたい」と語ります。その理由は「古いつきあいのあるメーカーからも“今年限り”と言われているから」。「たとえ原料がタダでも、中国産にはかなわない」と苦しい胸の内を明かしました。

 輸入果汁が、果実産地の地域経済を根こそぎ掘り崩している一方で、都会のスーパーやコンビニでは、大手の飲料メーカーが輸入果汁を使ったジュースでし烈なシェア争いを演じています。

 八九年に雪印とドール、九一年にキリンビバレッジとトロピカーナが、それぞれ合弁会社を設立したのは、果汁自由化を見越してのこと。さらに森永はサンキストの商標使用権をとり、明治は日本コカ・コーラと業務提携を結んで、積極的に輸入果汁を売り込んでいます。

 しかも、「厳選した数種類のアップルをブレンド」(トロピカーナ)、「ドールが誇るブレンド技術」などと誇示し、国産一〇〇%を謳う商品は一つもありません。

 安全な国産果実を

 しかし、こうした輸入果汁を使ったジュースからは、ポストハーベスト農薬が見つかっています。日本子孫基金が九五年に行った検査では、ドールやサンキストのアップルジュースから、殺菌剤や防腐剤として使われるTBZを検出。

 また東京都立衛生研究所が、九六年から〇一年にかけて行った「リンゴ加工品のパツリン汚染実態調査」では、市販ジュース百五十四品のうちの国産及び輸入の二十四品、原料果汁三十六品のうちの輸入及び国産の二十六品からパツリンを検出しました。

 地域経済をボロボロにする果汁輸入にストップをかけ、安心して食べたり、飲んだりできる国産果実を守る国民的な運動が求められています。


分析センター募金者氏名(敬称略)

ご協力ありがとうございました

2002年12月分

 北海道小松輝子、西沢美和子、江崎徹男、千葉光江、芽室農民組合、芽室町農協、鈴木幸恵、湯本靖子、北風節子ほか12人、田中英子、鈴木修二、岩崎和雄、新婦人札幌北支部わかば班一同、北空知農民組合、北空知産直センター12人、坂本哲子、赤川茂美、日下勝子、武田和夫、日下部勝江、後木裕子、館山ユキ子、音更町農民組合、中山龍平、竹田紀子、青森田沢富一、岩手菅原正直、安部輝夫、石山健、伊藤重夫、大石恵司、宮城加藤千穂子、武田典子、佐々木ゆきえ、秋田沼田幸子、斉藤せい、山形新婦人鶴岡支部、吉田吉弘ほか46人(山形地方農民連)、日本科学者会議山形支部鶴岡班、飯野武志、福島森利、神山悦子、宗像孝、伊藤直、佐々木健三、佐々木智子、佐々木光洋、佐々木裕子、佐々木健洋、茨城新婦人茨城県牛久支部産直部、若林均、正治章、小松美代子、県西農民センター5人、照沼明子、内田泰山

(新聞「農民」2003.2.17付)
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2003年2月

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