「農民」記事データベース20030217-574-01

売れ残る主食用輸入米

ミニマムアクセス 今こそ削減、制度廃止を!


 売れようが売れまいが一〇〇%輸入

 昨年の主食用ミニマム・アクセス米(特別売買=SBS米)の輸入は輸入枠の半分以下の四万トン。九五年以来の七年間、売れようが売れまいが、一貫して一〇〇%輸入してきたのに比べると大きな変化です(図1〈図はありません〉)。その背景にあるのは、ニセ表示や輸入野菜の残留農薬に対する消費者の反発。

 中国産・アメリカ産の冷凍ホウレン草から残留農薬が検出され、ついに輸入ゼロに追い込まれた昨年八月の第二回入札では、SBS米も輸入枠の三〇%以下に急落。その後も四〇%台に落ち込んだままです(図2〈図はありません〉)。

 「清酒から残留農薬が検出されたら目もあてられない」――外米を使っているある大手酒造メーカーの恐れは、こういう背景の端的な表現です。

 それだけに、いま、消費者ばかりか業者にも嫌われているミニマム・アクセス米輸入の削減と、ミニマム・アクセス制度そのものの廃止がどうしても必要です。

 アメリカの鶏肉輸入量わずか〇・〇三%

 “輸入ゼロは自由貿易体制にふさわしくない”から、要らないものでも最小限(ミニマム)の輸入機会(アクセス)を与えるべきだ――。これがミニマム・アクセスの理屈で、WTO協定で初めて導入されました。

 貿易は商品(グッズ)の交換であり、輸入国が「良いもの」(グッズ)と思わない商品まで押し売りすることは「自由貿易」どころか、輸出国本位の異常な「管理貿易」にすぎません。

 “輸入ゼロは自由貿易体制にふさわしくない”という理屈を振りかざすアメリカの実態はどうでしょうか。図3〈図はありません〉は、日本人にとっての米に匹敵する食肉とチーズの消費量に占める輸入割合を示したもの。

 日本は、米の消費量の七・二%分を輸入させられていますが、アメリカの鶏肉輸入は〇・〇三%。EUの豚肉輸入は〇・四%。どちらも“輸入ゼロ”状態です。チーズも、日本のミニマム・アクセス米輸入をはるかに下回ります。しかもアメリカ・EUともに、輸入を超える輸出をしていますから、純輸入量はゼロどころかマイナス。

 こういう実態をふまえれば「国際的押し売り」のルールは、いいかげんに廃止すべきです。

 新米も銘柄も無頓着な“貿易屋”の論理

 ミニマム・アクセスを導入したときのアメリカの理屈は、次のようなデタラメな三段論法です。

 (1)日本の米輸入がゼロ状態なのは、日本の市場が閉鎖的だからだ、(2)日本の消費者に選択の自由を与えなければならないが、アメリカ産米は後発なので、単なる機会均等では日本の米と競争できない、(3)だから、アメリカ国内で黒人の雇用差別の解消をめざした「積極的差別是正措置」を貿易にも適用し、一定比率のアメリカ産米購入目標を設定すべきだ――。

 もちろん、人間の尊厳を踏みにじる人種差別を解消するのは大いにけっこうなことです。しかしそれと日本の米とは、なんの関係もありません。

 「安全な食糧は自国の大地から」「身土不二」が食糧の生産と消費の本来のあり方です。“米という「同種の商品」があれば、消費者は輸入品であっても、必ず安いものを選ぶ”などというのは“貿易屋の論理”にすぎません。

 アメリカ農務省は九八年に“日本人が精米直後の新鮮な新米を好み、米の味そのものや銘柄にこだわる”ことを「発見」し、“遺伝子組み換え技術を使って日本人好みの米品種を開発する”というリポートを公表したことがあります。

 アメリカでは、米は付け合わせの“野菜”程度の位置で、産年にも銘柄にも無頓着。こういう輩が日本の米市場をこじあけるために振りかざしているデタラメな理屈がミニマム・アクセスです。

 要らない米を輸入しながら史上最大の減反に苦しむ日本。いま、日本政府がミニマム・アクセスの廃止・見直しを提起しなくて、いったいどの国が提起できるでしょうか。

 WTOルールの見直しの機会であるいま、こんなデタラメをやめさせようではありませんか。

 政府がその気になれば削減できる

 同時に、WTOルールの変更を待たなくても、ミニマム・アクセス数量は削減できます。ポイントは二つです。

 第一は「輸入機会の提供」にすぎないミニマム・アクセスを、日本政府が一方的に「輸入義務」だと解釈している状態を変えることです。WTO協定のどこにも「ミニマム・アクセスが輸入義務だ」などと書いていないことは、すでに国会で決着済みです(九九年三月九日、日本共産党・中林よし子衆院議員の質問)。

 ミニマム・アクセスを文字通り「輸入機会の提供」として扱い、需給事情に応じて柔軟に処理しているのが世界の流れ。

 米が余ってもミニマム・アクセスを「聖域」にして、もっぱら国産米の減反によって過剰対策を進めるという日本政府の逆立ちを改めることこそ重要です。

 第二に、EUは、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉を個別ではなく「食肉」と一括りにしてミニマム・アクセスを設定しました。図3のように、豚肉輸入がゼロに等しいのは、その結果です。

 日本も、米や小麦、トウモロコシなどを「穀物」として括れば、米にミニマム・アクセスを設定する必要はありません。それは、昨年九月の国会の議論からも明らかです。

 「松本善明議員(日本共産党) EUは食肉ということでやっているんだから、穀物ということで括ると、WTO協定そのものを変えなくても外交交渉でできるはずだ」

 「石原葵食糧庁長官 品目の単位については統一的なルールはない。各国の交渉にまかされているので、理論上は可能だ」(〇二年九月二十四日、衆院農水委員会)

 問題はアメリカ相手の交渉だという点にあります。EUを見習って、本腰を入れた交渉でミニマム・アクセスの設定の仕方を変えさせようではありませんか。

 それが、九五年以来八年間にわたって「輸入しながら減反とはなにごとか!」という怒りに背を向け続けてきた政府の、せめてもの償いではありませんか!

(新聞「農民」2003.2.17付)
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2003年2月

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