安全・おいしい野菜たべたい――看護学生、畑を借りてものづくり――「農業の魅力を体験し、新鮮で安全なおいしい野菜が食べたい」――自分たちの口にするものは自分たちで作りたいと考え、昨年三月から農業サークルを結成し、野菜づくりに取り組んでいる看護学生たちがいます。千葉県流山市にある勤医会東葛看護専門学校で話を聞きました。
農業サークルは昨年三月、東葛看護専門学校の一科六期生で現在三年の十一人が立ち上げました。その後、二年生や一年生も含めた十九人ほどが活動に参加しています。まっ青に澄みきった晴天のこの日、「自然が好き」という渡辺俊介さんほか、六人の学生にさっそく畑まで案内してもらいました。
昼休みと放課後の時間を使って農業サークルの畑は学校から歩いて二分ほどのところにあります。江戸川に隣接する看護学校の周りにはたくさんの畑があり、この畑は近隣の農家から借り受けました。 最初はトラクターで農家に整地してもらったものの、その後はみんなで畑を耕して種をまき、苗を植え、初めての野菜づくりにのぞみました。 昼休みや放課後、休日の時間を使って交代で水やりや草取りなどの世話を行い、野菜を育ててきました。その甲斐あって、夏までにナス、トマト、インゲン、オクラ、スイカ、カボチャなどを収穫。無農薬栽培だったので、虫に食べられて見栄えが悪くなり、収穫した野菜は個性あふれる形でしたが、自分で作っただけに味は格別だったといいます。 訪れた畑にはホウレンソウ、ダイコン、カブなどがおいしそうに育ち、食べごろになっていました。
農と食を知った地域フィールドしかし、お店で買えば済む野菜を、どうしてわざわざ作ろうと思ったのでしょう? 農業サークル結成のきっかけは昨年二月、渡辺さんたち七人が二年生の時、体験した「地域フィールド」でした。地域フィールドとは、東葛看護専門学校が行う社会体験実習のこと。社会のしくみと看護の役割を考えるために、町工場や企業、自営業や農業、大気汚染公害や基地問題などの分野にわかれて体験実習を行います。学生たちは可能な限り現場に密着し、それぞれの分野で労働と生活を体験します。 六年前、一期生が二年生になった時から毎年行われているこの地域フィールドは、生活する人たちから直に学ぶという、この学校ならではの取り組み。石倉啓子先生は「患者さんの生活や労働実態にあった医療・看護を考える上で欠かせない」といいます。
農薬残留の実態にビックリ!昨年二月の地域フィールドでは、初めて農業が取り入れられ、自然が好きな渡辺さんは農業を選びます。そして、事前学習のために、ほかの六人と一緒に千葉県農民連を訪れました。この時、小倉毅書記長から農業の歴史とともにマクドナルドなどのハンバーガーに農薬が残留していることなど、食の実態を聞いてビックリ。 「キッチンカーやWTO協定など、チンプンカンプンでわからない話が多かったけど、調べ直すうちに、食をめぐって国と国との利益がかかわり、人の健康より利益優先になっているのかと思った」。学生たちはこの時の感想をこう話します。 二月、学校のある流山市の農家などで農業を体験した学生たちは、農家から聞いた話や農業と食をめぐる問題についてのレポートをまとめます。 渡辺さんが、こうした活動を通じて感じた食や農のことを話し合ったのが、同じクラスで農業サークル代表の宗像謙さん。農業を体験したわけではありませんが、宗像さんは渡辺さんと語り合うなかで、実際に自分たちの口にするものは自分たちの手で育てようと農業サークル結成を決意し、三月に立ち上げます。
これからも野菜を作り続けたい農業サークルに参加する学生たちは、地域フィールドやレポート、野菜作りを通じて学んだことを次のように語ります。「農家の患者さんに出会ったら草取りのことなど、患者さんの立場で考えていきたい」(楠田さん)、「値段だけでなく体を考えて食べたい。食の安全も考えて患者さんに接していきたい」(佐藤さん)、「まずは自分の食事から気をつけていきたい」(高橋さん)、「形のよい、お店で売っているものは簡単に作れないとよくわかった」(高山さん)、「友達にマックの農薬のことを伝えていけたらと思う」(千葉さん)、「農家の患者さんとのコミュニケーションに生かせたらと思う」(梅陰さん)。 「みんな、いい物を食べないといけないと思うように変わっていった」と言う渡辺さん。「卒業しても畑を借りて、働きながら野菜作りを続けたい」とこれからの抱負を語ってくれました。
(新聞「農民」2003.2.3付)
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[2003年2月]
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