「農民」記事データベース20030203-572-01

東京・町田市

10年ぶり生産緑地に指定

 米や野菜を作り、牛を飼っているのに、農地ではなく宅地とみなされてべらぼうな税金をもっていかれる。そんな東京・町田市の市街化区域内の基準を満たした農地が、この一月一日から生産緑地の追加指定を受け、本来の農地として扱われるようになりました。三多摩地区での追加指定は実に十年ぶり。運動を続けてきた町田の農業を考える会(斎藤義光会長)は、引き続き指定基準の改善を求めて署名活動を広げています。


年金も家族の給与もみな税金に…

農民、消費者の運動実る

 人口四十万の町田市は東京近郊の典型的なベッドタウン。農地(販売農家と自給農家を合わせた経営耕地面積)は、四百八十三ヘクタール。農家戸数は千百五十九戸で、農家人口は五千七十七人(二〇〇〇年世界農林業センサス)です。このうち市街化区域内の農地は四百五十四ヘクタールで、生産緑地は二百九十ヘクタール、市街化区域内農地の六二%に当たります(二〇〇二年一月一日現在)。

 宅地並み課税の農家に朗報

 市街化区域内で生産緑地に指定されていない場合、十アール(千平方メートル)の宅地並みの固定資産税は、路線価の高いところでは年八十万円にもなります。その土地で作られる農産物は、米の場合だと五俵の収穫としてわずか六万円。農地並み課税だと三万円ですむのに、です。

 三年前のことです。会の斎藤勇事務局長らが農家を回ってみると、「収入もないのに税金ばかりとられてはかなわない。年金収入も家族の給与もみんな税金につぎ込まなくてはならなくなる」という悲鳴に満ちていました。

 「都市農業の役割をもっと重視してほしい」。斎藤勇さんら会のメンバーは早速、新たに生産緑地として追加指定させる取り組みを開始。町田市の農業委員会や農業振興課、都市計画課と交渉、市議会での質問など運動を進めていき、四十五軒の農家の約六・五ヘクタールの農地が新たに生産緑地に指定されました。

 町田市下小山田町の兼業農家、大谷公二さん(67)は、生産緑地の追加指定をうけた一人。対象となった農地は三十三アール。追加指定された農地は、六年くらい前に「道路をつくる」ことを条件に市街化区域に編入され、生産緑地の指定を受けることができないままになっていました。「機会があるたびに市役所にいって、生産緑地に指定するようお願いしたんですが、都がだめだといっている、と受け付けてくれませんでした」と大谷さん。このため、固定資産税が「一気に年間百万円増えた」といいます。

 あと十アール近い農地が指定されないままです。

 「農業で収入があがるならいいが、さっぱりだ。仕方なく農地を何とか維持・管理しているのが実情です。だから土地を売って税金を払う。そうなると結局、農家をつぶしてしまう。その土地で事業をやっても高い相続税でつぶされる。生産緑地の指定で、まず農家をつぶさないことが大事です」。大谷さんはにっちもさっちもいかない農家の実情を訴えます。

 指定基準の引き下げもとめ

 今回の追加指定は、農家から申請のあった面積の半分です。町田市が決めた実施基準が、三千平方メートル以上とまとまった農地となっていることがひびいています。

 町田市都市計画課の神蔵孝司課長は、「公共用地の種地として必要なところを指定していくというのが、趣旨です。将来的には公園にするとか、防災など公共利用を考えると、三千平方メートル以上必要だろうということで決めました」といいます。

 東京の市部では立川市や東村山市、日野市などは生産緑地法どおり五百平方メートルで指定しています。このため斎藤さんたちは、市が決めた基準を緩和して法律で決められている五百平方メートルに引き下げる署名運動に取り組み、約三百人の署名を議会などに提出。本会議でこの請願が採択されて、市もいま、基準の見直し作業に入っています。この署名には六人の農業委員、自民党町田市部の幹部、地域の氏神様の氏子総代をやっている有力農家なども応じました。

 新婦人町田支部も「いま私たちはお米は茨城、野菜は船橋からの産直に取り組んでいます。地元・町田の農家が作ったものを食べられるようになるのが夢です」(土屋卓子支部長)と、農家と協力して署名に取り組んでいます。

 市農業委員会も「秋の指定に間に合わせて五百平方メートルでやってくれるよう、二月に入って都市計画課にお願いし、話し合う予定だ」といいます。

 都会の中にこそ農地が必要

 生産緑地の追加指定については、国も「これまで制限をかけたことはない。都市計画で刻々と変わる状況の中で、各自治体が判断することだ」(国土交通省公園緑地課)としています。

 町田市農業協同組合の河合勗組合長は「今後は生産緑地の指定基準を五百平方メートルでお願いしたいと、行政との懇談のなかで話している。いま輸入食料に頼っているが、将来的にみて自給率を高めるためにも、都市農業を残していくことが大事だ。それに、都市の中の緑は、多面的な効果をもっている。癒しや子どもへの教育効果もそうだ。都会の中にこそ農地を残さなければならない」と話しています。

(新聞「農民」2003.2.3付)
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2003年2月

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