「農協改革」の現時点(4)山本 博史
独禁法適用除外への攻撃=協同組合活動への挑戦状=
経済民主化が目的の独禁法農協は、他の協同組合とともに、独占禁止法の適用除外の扱いをうけています。独禁法は、正式名称を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といい、戦後改革のなかで、財閥解体などと合わせて、「公正かつ自由な競争を促進し、……国民経済の民主的で健全な発達を促進する」ことを目的にして制定され、一九四七年四月に公布されました。 企業間で生産数量や販売条件について協定し、独占価格を形成する「カルテル」や、企業合同による高度な独占体「トラスト」の形成を制限・禁止しています。しかし、その後の改悪によって、不況カルテルや合理化カルテルが認められ、多国籍企業などによる経済への撹乱や反社会的行為への規制が行われていない実状となっています。
協同組合には適用除外この独禁法の第二十二条に、適用除外に関する規定が行われ、その要件も定められています(別表)。ここでいう「小規模な事業者または消費者の相互扶助を目的」とした、加入・脱退が自由で一人一票の「平等な議決権」が与えられ、(出資金に対する)利益配当が制限されている「組合」とは、まさに各種協同組合をさすものです。別に定められた「独禁法適用除外等に関する法律」でも、この対象となる協同組合の種類やその根拠法を具体的に列記しています。
つまり、現行独禁法では、農民を含む小規模事業者や消費者が行う協同事業は、法律の「ただし書き」にあたる場合を除いて、不当で不公正な取引とは認めない基本姿勢が示されているのです。 今回の、小泉首相が議長となり、経済・財政・金融担当閣僚を含め財界、学者などがメンバーとなっている経済財政諮問会議での「農協に対する独禁法適用除外は問題」として再検討を求める発言は、農協ばかりでなく、協同組合全体への攻撃とみられます。
協同組合促進でILO勧告一方で、ことし六月にジュネーブで開催された国際労働機構(ILO)第九十回総会での「協同組合の促進に関する勧告」決議が、いま注目を集めています。ILOは国連機構の一つであり、各国政府が構成する国際機関ですが、今回の勧告決議では、国際NGOであるICA(国際協同組合同盟)による「協同組合のアイデンティティー声明」の定義・価値・原則をそのまま引用しています。そして、協同組合の人間的連帯が「グローバル化の利益をより公正に分配するために必要」であり、「すべての人々の経済・社会発展への完全参加の促進」に寄与していると、その重要性を高く評価しています。また、協同組合促進のための各国政府の役割について、「他の形態の企業や社会組織に認められているよりも不利でない条件で処遇されるべき」などと、政府のとるべき適正な措置を勧告しています。 この勧告決議には、日本の政府代表も賛成しており、国内で日本政府が示している姿勢とは、極端な相違がみられます。
(つづく)
(新聞「農民」2002.10.28付)
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[2002年10月]
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