佐賀市学校給食パンを安全な地場産で“食農教育”“農業振興”にも学校給食のパンを地場産の小麦で――という取り組みが広がっています。「国産小麦は、パンに向かない」というのが、これまでの常識です。だけど、子どもたちに安全な給食をとの一心な願いが、工夫を生み、安全でおいしいパンを実現しています。
残留農薬検査で拍車佐賀県の県都・佐賀市には、二十の小学校と小・中併設校で完全給食をやっています。そのうち週二回、年間だと約七十回がパンの日で、四十トンの小麦粉を使います。 学校給食のあり方を見直そうと、佐賀市教育委員会は二〇〇〇年四月から一年間、十数回にわたる調査・検討をかさねてきました。その四本柱の一つが、「地場産品の導入」です。なかでも「米飯給食に佐賀市産米を積極的に使用できないか」、「学校給食用パンに国産小麦粉を使用できないか」が、中心テーマでした。 佐賀市の児童生徒に、市内の農家が努力して作ったものを提供できれば、どんなメリットがあるだろうか。会議では、 「より安全で、より新鮮な食材が食べられる」 「佐賀市の農業振興につながる」 「子どもたちが食材をとおして佐賀市の農業や生産者のことを理解し、そのことが食農教育の推進にもつながる」 ――などの意見が出されました。 「輸入小麦を使った学校給食のパンから、ごく微量ながら残留農薬が検出されたことも、議論を深めた要因の一つです」と、市教育委員会学校教育課の担当者。
給食費も据え置き一年間の調査・検討を経て、二〇〇一年四月から輸入小麦をやめ、国産小麦の使用が始まります。子どもたちにより安全なパンを提供することは、「可能な限り、疑わしきは使用しない」という教育委員会のこれまでの考え方にもとづくものだ、といいます。 残念ながら、いまはまだ佐賀市産の小麦を使っているわけではありません。なるべくパン作りに向いた小麦をということで、北海道産のホクシンを使っています。めん用にと開発された小麦です。試作に半年以上かかりました。 国産小麦の使用を条件に、業者とはパン一個いくら、ということで契約しています。コストは、一個平均で一円余り高くなったといいます。経費のアップ分は、全体の給食費の中でまかなってきました。 それも二〇〇二年度からは、企業努力もあって一円値引きしてもらいました。おかげで二〇〇〇年度の価格に戻ります。業者も二〇〇一年度一社だったのが、二〇〇二年度からは二社になりました。 「西南暖地用のパン作りに適したニシノカオリという小麦も開発されていて、いま佐賀市などのほ場で試験栽培されています。それが順調にいって使えるめどがたてば、市産・県産の小麦を使っていきたいと考えています。これが実現すると、農家のやる気、張り合いにつながるでしょうね」(市教育委員会学校教育課) 関係者は、その日が一日も早くやってくることを心待ちにしています。
(新聞「農民」2002.10.21付)
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[2002年10月]
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