「農民」記事データベース20020930-556-08

市場原理では米は守れない

大阪消団連事務局長 飯田 秀男

 全大阪消費者団体連絡会の飯田秀男事務局長から寄せられた、生産調整研究会「中間取りまとめ」に対する意見を紹介します。

 飯田さんは、五月に大阪で開かれた生産調整研究会・現地検討会で「ミニマム・アクセス米の影響がないとは到底思えない。輸入をやめることを前提にした議論も必要」と発言。これに、研究会の中野吉實委員(JA佐賀県中央会副会長)が「非常に感激した。まったく同じ意見」と述べて、大きな反響を呼びました。


 「米政策の再構築に向けた中間取りまとめ」(以下、「中間取りまとめ」)と「食と農の再生プラン」が実施されると、日本の稲作は壊滅的な打撃を受けるでしょう。今こそ日本農業を守り発展させるための国民的合意と、それにもとづく施策を推し進める必要があります。

 MA米評価、先に結論ありき

 「中間取りまとめ」が議論を避けたのがミニマム・アクセス米問題で、これが第一の問題点です。「生産調整に関する研究会」の議論は「心理的な影響はあっても実害はない」という不思議な結論です。「ミニマム・アクセス米の影響評価」は、先に結論ありきで、実証的・総合的検証を行ったものとは思えません。

 年間七十七万トンもの輸入米が市場経済に影響を与えないとの珍説のうえに、“財政負担さえすればいくらでも輸入は可能、国内への影響は回避できる”という空論で組み立てられています。国民の「減反して、なぜ輸入するのか」という率直な疑問にまともに答えたものではありません。

 第二の問題点は、副業農家を含めた稲作農業の展望を示せなかった点です。「中間取りまとめ」では、かろうじて生産者米価を暴落から守ってきた「稲作経営安定対策」の廃止を明確にうたいました。しかし、それに代わる所得対策は提示していません。

 消費者は、安全な食料が、安定的に確保されることを望みます。そのためには、日本国内で永続的に生産力を維持し続け、可能な限り国内生産力を発展させ続ける体制が必要です。すなわち、生産者に生産費を保証することです。

 流通の不透明さは高くなる

 第三の問題点は、米の生産・流通・消費を市場原理でおおいつくそうとしていることです。「中間取りまとめ」は、生産者個々人に責任があるかのように描き、主食を安定確保するという国の責任を後景に追いやろうとの思惑が見え隠れします。

 流通過程においても、さらに市場原理が貫徹する提案がされています。計画流通と計画外流通の垣根を取り払い、市場に任せれば、米価はさらに暴落し、流通の不透明さは格段に高くなります。こうしたなかで、食の安全は守られるのかという疑問に「中間取りまとめ」は答えていません。

 問題点の第四は、国がその責任を放棄していることです。主食の生産を維持・発展させ、食料自給率を向上させることは国の責務です。余り米を生産者の自己責任で処理しなさいとの立場は、安定供給から手を引くだけでなく、流通市場を混乱させ、生産者の再生産を保証しない立場を表明したことになります。

 「第三者機関」という正体不明の機関が、いかにも客観的・総合的で正確な判断ができるかのように描いていますが、その保証はありません。むしろ国が責任を持つと明言できないところにこそ問題の本質があります。

 自給率向上と持続的な国内農業の展望を示せず、食品・農産物の輸入に歯止めをかけることができない政府の方針は、内外に対して迫力を欠いています。生産者と消費者が力を合わせて、日本農業を守り発展させる運動に取り組むことが求められています。

(新聞「農民」2002.9.30付)
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2002年9月

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