「農民」記事データベース20020923-555-01

インタビュー

―生産調整研究会「中間取りまとめ」―
生産者の声十分に反映できず

JA全青協全国農協青年組織協議会会長

門傳 英慈(もんでんえいじ)さん

 全国農協青年組織協議会(全青協)の門傳英慈会長(39)に、米「改革」に対する意見を聞きました。門傳氏は、宮城県一迫町で六ヘクタールの水田経営と納豆工場を営んでおり、生産調整研究会のメンバーでもあります。インタビューは、八月二十八日に東京・JAビル内で行われ、農民連青年部の森吉秀樹事務局長も同席しました。
(二瓶)


 取りまとめ具体化はこれから

 ――生産調整研究会の「中間取りまとめ」に対する受け止めと、秋の議論に向けた抱負を聞かせてください。

 門傳 「中間取りまとめ」には、生産者の意見を十分反映できなかったと思っています。しかし「中間取りまとめ」は大枠で方向を示したもので、具体策はこれからです。

 いま農協が行っている組織討議、全青協が行った意見集約をふまえていろいろと発言していきたいと思っています。

 私は、生産者自らが、やるべきことをやったうえで、行政や団体にも責任、役割をしっかり担ってもらうことが必要だと思っています。

 米生産をどう継いでいくのか大事なのは納得できるてだて

 ――農業青年の役割をどうお考えですか。

 門傳 まずは米生産を担うこと、さらに地域のリーダーシップをとることです。安全で安心、おいしいものを作るのは当然で、さらにその先、地域として水田農業をどう位置づけるのか、真剣に考えなければならない時期だと思っています。

 これを地域の青年だけでやれといっても無理ですから、行政や農協、そして農業者以外の人も取り込んでいかなければならないと思っています。地域のこれから先をどう描くのか、大きなことですけれども、やらなければいけないことです。

 いま地域で米生産を実際に担っているのは、年配の方々です。この人たちの後をどう継いでいくのか、考えなければなりません。米を作る若者が出てこない背景は、もうからないからです。宮城県でも、かつては田んぼが三〜四ヘクタールあれば大農家で、家族六〜七人が生活できて、一人くらいは大学に通わせることができました。ところが今は、到底そんなことはできません。経営状況が悪くなったから、勤めに出るとか、他に畜産や畑作をやるとか、方向転換していきました。米だけを大規模にやっている人は極めて少ないのが現状です。

 “価格は市場で、所得は政策で”みたいな議論がありますが、それがいいのか悪いのか、私にはわかりません。政策でやるというのは税金ですから、どこの誰にどのようにという問題とともに、そもそもやるということに合意が得られるのかという問題があります。

 本来は農産物の販売代金で生活できることが基本です。最初から助成金をあてにしているのは、健全とはいえません。

 しかし価格の低迷には、輸入農産物のことがあり、産地間競争などいろいろな要因があります。アメリカなども政策で農家の所得を保障しています。現実にあるそういう面を無視するとか、否定することはできません。大事なのは、流通や加工、そして消費する人みんなが、「そうですね」と納得できる手立てを考えることだと思います。

 MA米『はなはだ困った存在』

 ――ミニマムアクセス米についてお考えを聞かせてください。

 門傳 経済学の専門家ではないので、その影響を定量的に分析できるかどうかわかりませんが、ミニマムアクセス米が存在していることは事実です。何をもって影響がないとするのか、あるとするのか、私にはわかりません。ただ、生産者としての心情は「はなはだ困った存在」です。「よし、よし」と思っている人はいないでしょう。

 米は主食ですから、国の食糧問題です。ここ三十〜四十年、米が大きく不足することはありませんでした。そうしたなかで、農家はやむなく減反をやってきました。減反政策の評価もいろいろあると思いますが、私は、三十四年間、計画どおりの面積をこなしてきたというのはすごいことだと思います。私は生産者代表委員ですから、そうした農家の思いをベースにして、意見を述べていきたいと思っています。

(新聞「農民」2002.9.23付)
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2002年9月

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