炭やき農民のすすめ(9)杉浦銀治
世界の炭焼き炭やきは世界中で行われている。一番はブラジルで年間八百五十万トン生産している。日本はかつて約二百三十万トン生産していたが、その三倍以上。しかし、日本の炭やき技術は世界一である。私は九二年にJICAの依頼で、マレーシアで白炭窯の技術移転を担当した。マレーシアは石炭が出ないので、燃料として長持ちする白炭が注目され、クアラルンプールの国立森林研究所が炭やき技術の習得を急いでいた。日本古来の炭窯の造り方を教えながら一基造り、マングローブの枝やゴムの木の切れ端で白炭を焼いてみせると、次の日のテレビや新聞が報じて大いに注目された。 当時は、ゴムは採るが、ゴムの木はほとんど使われていなかった。廃材扱いだったものが立派な白炭になり、環境保全の面でも炭の役割を分かってもらうことができた。 炭やき技術には、地域や風土によって様々な伝承技術がある。タイの伏焼法は、平地にバナナの茎(径二十センチ、長さ四十センチ)を五本用意し、これを焚口にして、炭材(庭木の枝やトウモロコシの茎、モミガラなど)を円錐形に積み上げる。高さは炭材によるが一メートルくらい。これに草をかけ、バナナの葉で二重に覆った後、土を十センチくらい被せ、竹筒を六カ所くらい差して煙出しにする。焚口にするバナナの茎が燃えないことを、現地の人は知っている。しかし、木酢液が採れず、操作も複雑で、日本式のやり方を教えてあげたいと思う。 世界の主要製炭法には、(1)炭窯を造らない方法と、(2)炭窯を使用する方法がある。(1)には、原始的だが合理的な伏焼法、穴を掘って炭化する坑内製炭法があり、マイラー製炭法は木材を大量に堆積して枝葉で覆い、その上に土を被せる製法で、欧米で行われている。 (2)には、粘土、石による築窯製炭で中国や朝鮮半島、日本で行われている中国型、イラン、トルコなどで行われている中東型、鉄板、ブロックレンガ、セメントなどで窯を造る欧米型がある。 工業的製法としては、連続的に炭化する木材乾留法・トロリー方式があり、ノコギリ屑や小片炭材を炭化する方法としては、固定式の平炉(日本)や流動式、縦型・横型のロータリー式などがある。
(新聞「農民」2002.8.26付)
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[2002年8月]
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