「農民」記事データベース20020812-551-12

食塩の添加物 スピード許可

“外国で使っているから日本でも”とは!?


 「日本は食料輸入大国だから、外国で使っている添加物を日本でも使っていいことにしよう」――協和香料化学やミスタードーナツの肉まんなど、違法添加物が原因で商品回収が相次ぐなか、厚生労働省は、新たに二十六品目もの食品添加物を、職権で認可すると発表しました(表)。その第一弾として、食塩の添加物「フェロシアン化物」が七月二十六日の薬事・食品衛生審議会で、十分な議論もないままスピード認可されました。

 
厚生省が認可しようとしている添加物
名称
主な用途
アルギン酸アンモニウム 増粘剤、安定剤
酢酸カルシウム 保存剤、安定剤
アルギン酸カルシウム 増粘剤、安定剤
ケイ酸カルシウムアルミニウム 固結防止剤
酸化カルシウム アルカリ、イーストフード
ケイ酸カルシウム 固結防止剤
ソルビン酸カルシウム 保存剤
カンタキサンチン 着色料
カルミン 着色料
水酸化マグネシウム アルカリ
ケイ酸マグネシウム(合成品) 固結防止剤
L-グルタミン酸アンモニウム 風味増強剤
ナイシン 保存剤
亜酸化窒素 充てんガス
ナタマイシン 保存剤
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80) 乳化剤
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60) 乳化剤
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート(ポリソルベート65) 乳化剤
ポリビニルピロリドン ボデー付与剤、清澄剤
アルギン酸カリウム 増粘剤、安定剤
乳酸カリウム(溶液) 酸化防止剤のシネルギスト
硫酸カリウム 食塩代替品
アルミノケイ酸ナトリウム 固結防止剤
フェロシアン化ナトリウム 固結防止剤
ステアロイル乳酸ナトリウム 乳化剤、安定剤
クエン酸三エチル 担体溶剤、金属封鎖剤

 いま、国民の安全と健康をおびやかす大改悪が、厚労省の「職権」だけで推し進められようとしています。

 六月中旬、埼玉県の業者が中国産のフェロシアン化塩を自主回収。しかしもっと深刻だったのは、こういう輸入の塩を使った加工食品・輸入食品が膨大な量 にのぼることでした。そこで厚労省は「商品回収が広がると市場が混乱するので、急いで認可して規制も回収もしない」という無責任な対応をとることにしたのです。

 さらに厚労省は二十六品目の拡大認可についても「輸入食品が六割を占める現状では、今後も未指定の添加物を使った食品が輸入される可能性が高いので、アメリカやヨーロッパとの国際基準との差をなくす」と、大転換の動機を涼しい顔で発表しました。

 これには消費者団体や生協が大きな反対の声を上げる一方、大喜びしているのが食品業界、商社や流通 業界です。相次ぐ商品回収に悩まされてきた業界からは、これまでも「輸入しやすいように、欧米と同じ添加物基準にしろ」との猛烈アピールがありました。業界は今後七十品目の指定を申請する予定です。

 さらに、厚労省の方針転換の裏には、実はアメリカなどの外国からの猛烈な圧力も働きました(認可までの経緯を参照)。

 「慎重に審議・検証を」との要望書を送った日本塩工業会の理事技術部長尾形昇さんは、今回のフェロシアン化塩の認可について「食用塩は、国内自給が基本。国内の食用塩にはまったく必要のない添加物であり、安全性を十分に検討すべきだ。アメリカの一言で、審議もせずに決まるのは疑問だ」「フェロシアン化物は数ある塩の添加物の中でも、特に問題がある。安く上がるので使いたがるのだろうが、危ないものからいわば抜き打ちで認可するとは、どういうことか」と話しています。

 農民連、食健連も、今後、食品添加物の削減を求めて要請に取り組む予定です。


  ■食品添加物

 本来、食べ物とはまったく違うもので、食べ物を工業製品化するなかで、製造しやすくしたり、日持ちさせたり、色をよくしたりするために混ぜられる物質。認可指定された物質だけを使用できる「ポジティブリスト」方式で、現在の指定品目は八百二十八種類(香料をのぞく)。消費者の不安の声を反映して「食品添加物の使用は極力制限する方向で措置する」という全会一致の国会決議(72年)がある。これまではメーカーなどの申請をうけて一年近くかけて審査され、年一〜二件のペースで承認されてきた。

 食品添加物についてはFAO(世界食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同専門家会議(FECFA)が、世界基準を決めている。

  ■フェロシアン化物

 塩の固結防止剤。外国では広く添加されているが、アメリカでは消費者の反対運動が起きている。pH3以下で60度以上に加熱したり、水に溶かして紫外線を照射すると毒性の強いシアンが発生するシアン化物。厚生労働省は「安全性が認められている」と繰り返しているが、慢性毒性、発ガン性、遺伝上の影響に関するデータは公表されていない。キャリーオーバーにあたるため、添加されても商品には表示されない。

  ■厚労省の方針転換とフェロシアン化物認可までの経緯          

6/14 埼玉の業者がフェロシアン化塩を自主回収以後、フェロシアン化塩の回収が相次ぐ
下旬 アメリカ塩協会(SI)が、厚生労働省に圧力をかけるようアメリカ農務省に要請。また、大使館から圧力をかけるように、EU、オーストラリア、中国の塩協会にも要請
6/27 アメリカ、EU、オーストラリア、タイの在日大使館員が厚労省を訪れ、要請
7/2 SIの機関紙に「日本が添加物行政を大転換する。アメリカ農務省の働きに感謝する」趣旨の記事が掲載される
7/12 厚労省が、フェロシアン化物の認可と、厚労省の「職権」で外国で使われている添加物(当面 26品目)を拡大指定していく方針を発表
7/26 厚労省薬事・食品衛生審議会で7/12発表の内容が承認される

(新聞「農民」2002.8.12付)
ライン

2002年8月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2002, 農民運動全国連合会