小説『稲の旋律』(旭爪あかね著)を読んで「農」織り交ぜながら自分探す青年の姿描く農民連青年部長 菅井 巌
旭爪(ひのつめ)さんには大変失礼ですが、実は「しんぶん赤旗」に連載されていた時は所々を読んだだけで、全体のストーリーは解らずにいました。 旭爪さんには農民連青年部の第十回総会で、『稲の旋律』ができるまでについて講演していただきました。講演の最後に「自分が農業を題材に選んだことを誇りに思う」と結んだ話を聞き、改めてこの本の完成を待ち望んでいました。 主人公の「ひきこもり」の女性が、意を決して前の会社へ向かおうとして「光と熱を吸収する植物がほしい…心が灼けて乾上がって…」と感じる場面では、親に期待され、裏切ってこなかった彼女が、それに疲れ、傷ついた時の心の叫びをよく表していると感じました。 また、主人公が、かつての会社が所在する駅で心臓が高鳴り、電車から降りられず、そのまま千葉へ向かった場面では、その目に映った車窓からの情景を思い浮かべ、暗く長いトンネルを抜け出して行く感覚を覚えました。そしてそこから、一気に何かが始まるというストーリーへの期待が沸いてきました。 主人公が自分を探してゆく姿、農作業を体験するなかで「優等生のナス」の姿を自分に見立てて悲しくなったり、結婚に悩む農業青年の二度の失恋に、「農業への誇り」を取り戻す苦悩を感じたり、時に母親の苦悩の語り(過去)など、「人生」と「農」を交互に織り交ぜながら手紙形式で語られるストーリーに、ぐっと深く吸い寄せられました。 私も、そして現代の青年のほとんどがもっている「悩み」=「競争原理社会での、本当の自分探しの人生」が良く表されていると思います。 作者には、この作品の続編にもぜひ取り組んでほしいと期待しています。
(新聞「農民」2002.6.24付)
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[2002年6月]
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