果実世界中から日本へ輸入解禁要請ラッシュ政府の国内農業軽視の責任は重大
いま、日本に世界中から六十一件もの農産物輸入解禁要請が来ています。(表・生果 実だけを抜粋)
農水省によると、農産物の輸入解禁手続きは、(1)輸出国による輸入解禁要請、(2)試験・調査計画の確定、(3)試験・調査データ確認終了、(4)現地確認・調査計画確定、(5)調査結果確認終了、(6)公聴会開催―解禁となります。 現在、果実で(5)段階まで進み、公聴会を残すだけなのはチリのさくらんぼ、スペインのオレンジ、イスラエルの柿の三品種。 りんごもオーストラリアのジョナゴールドが(3)段階(ふじは既解禁)、フランスのふじが(2)段階(ゴールデンデリシアスは既解禁)、アメリカ・カリフォルニア産のリンゴ生果実が(2)段階(ふじ、ジョナほか既解禁)。レバノンのブドウが(1)。南アフリカからも。 かんきつ類は生産量が世界第六〜七番目でさらに輸出用に生産量を増やしているアルゼンチンが(4)段階。中国のポンカンが(2)段階で、このほかにイスラエル、イタリア、南アフリカなどとめじろ押し。 日本は貿易自由化をしているので農産物輸入の諾否は有害動植物防疫の観点からだけ。有害な動植物を国内に入れないのは当然ですが、検疫の方法まで変えられました。九九年、アメリカが日本のリンゴなどの検疫方法についてWTOに提訴し、その勧告がありました。 今までは、一定期間リンゴの品種ごとに害虫を寄生させて臭化メチルでくん蒸し、五〇%が死ぬガス量(LD50値)を実験で求めてきたのを、今年二月アメリカとの間で技術的調整が終了、今度は「CT値」(ガス濃度×くん蒸時間、殺虫に有効なガス量を示す値)で表す方法になりました。 品種が異ってもCT値が一定のレベル以上なら害虫が死んだと判断します。農水省は「簡素化ではない」といっていますが、いままでのふじとかジョナとか品種ごとにくん蒸するアメリカ側の“わずらわしさ”を外したのですから簡素化のひとつです。解禁要請が「カリフォルニア州」と地域になっているのもうなずけます。 歴代自民党政治を引き継ぐ親米というより“忠米”の小泉自公政府。そこには国内農業と農民を守るという姿勢は見当たりません。このような日本政府の足元を見た輸出国は、相次いで日本に輸入解禁を求めて来ているのです。
果実のセーフガードの発動を●町田正晴さん(57)ブドウ農家=長野・中野市農協理事、中野市農民組合副組合長中野市はキノコとブドウの産地ですが、低価格で大変です。なんでもかんでも輸入される中、いろいろな所で話になるのですが、結局、根本的対処と技術的対処しかないということです。しかし技術的対処はもう限界です。農協幹部の中からも「日本は独立国として、貿易立国が国策だなどといわずに農業の重要性を中心に据えて世界に理解を求めなければだめだ」との声が出るほど。私は根本的対処、つまりセーフガードの発動とか、自民党政権を代えなければだめなところへ来ていると思います。
●石村孝憲さん(53)リンゴ農家=青森・西北農民組合長オーストラリアからジョナ、フランスのふじ、さらにアメリカからは新たに輸入解禁要請が来ているそうですが、防疫・検疫でしか輸入を押さえられないなんておかしいですよ。政府は農家の苦しみなど考えてなんかいない。青森のリンゴ農家は、何回も台風や自然災害にやられ、消費者のみなさんの支援で頑張ってきましたが、野菜だけでなくリンゴなどのセーフガードも発動させる取り組みが必要になってくるんじゃないですか。
(新聞「農民」2001.7.23付)
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[2001年7月]
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